加古里子さんと言えば、「からすのパンやさん」「だるまちゃんとてんぐちゃん」「はははのはなし」等のベストセラーでつとに知られています。
加古さんは、何と御年85歳。
緑内障の手術を繰り返し、見える右目だけで描かれています。
視野が狭く、腰痛も抱えているのに、加古さんの旺盛な知的好奇心は衰えを知らないのです。
その加古さんの構想30年、製作5年の作品ですから、外れのはずがありません。
物語は、読み手も「長城探検隊」の一人となって、万里の長城を探索しましょうという言葉で始まります。
万里の長城のみを描いていると思いきや、さにあらず。
地球の生誕から描いているのです。
万里の長城とは何か?
どうして2000年も前に構築する必要があったのか?
遊牧民族と農耕民族の関係と長城との関わりは?
等、今に至るまでの歴史が分かりやすく紐解かれています。
他の民族との共存とは?地域紛争の解決策とは?
と言ったことまで踏み込んでいて、読み手に深く考えさせる作品でもあると思います。
小学校高学年からとありますが、大人まで充分に堪能できるもので、一種の辞典として活用できる水準の高さです。
しかも定価が1700円+税というのは、この内容からしたら安過ぎです。
一家に一冊あっても良いと思えるお勧めの作品。
「せいめいの歴史」に匹敵するのではないかと思える出来栄えだと思います。