年老いた壁塗り職人と弱ったハトの物語。
壁塗り職人のアンジェロが仕事をする教会の屋根から見渡したイタリアの風景、見下ろした町の後継、ハトのシルビアが見上げた町並み、描かれている絵のアングルに他の絵本にない素晴らしさを感じました。
そして、アンジェロの心弱った姿と、ハトに向ける優しさに、老いと自分の人生の最後を見つめる姿を見事に表現しています。
若いころの自分だったら、仕事に厄介者だったはずのハト。
見向きもしなかったハトへの思いやりは、アンジェロの熟成、人生への悟りを表現しています。
弱って自分に委ねられたハトの命を見捨てることのできなくなったアンジェロ。
アンジェロは仕事としての教会の壁塗りだけではなく、天使、神像の修復をしながら信心を深め、自分の死への思いを深めていくのです。
シルビアと心を通い合わせるようになったアンジェロ。
自分の死を悟ったアンジェロは、シルビアに素晴らしい贈り物をして息をひきとります。
著者のデビット・マコーレーは、デザイン学校で建築デザインを学び、『カテドラル』、『ピラミッド』、『キャッスル』など、建築画に関する本が多いようです。
略歴を知ってナットク。
物語だけではなく、絵の素晴らしさは見てみないとわからないですね。