戦争中の千島列島の無人島が舞台となっています。
その中でキツネの親子の物語としてみれば、家族愛の話なのでしょう。
子どもを守ろうとして銃に向かっていく父親ギツネ。
罠にかかって動けないちびこギツネに餌を運び続ける、自らも傷を負った母ギツネ。
何年かのちに、島を訪れた老夫婦の見たものは息絶えたキツネの後に咲くキツネザクラ。
そして、2匹の姿はない。
とても思いのある家族愛の物語です。
中心にいるのはキツネですが、もう一つの主人公はこの島を訪れて漁を続ける老夫婦。
一年の決まった時期に島に滞在してさかなや海藻を収穫して、冬になると本島に戻っていく暮らしをしているのです。
二人にとって大事な生活の場ですが、戦争のために行くことができなくなってしまった場所。
小さな島でありながら戦場であったのです。
島にある娘地蔵が、過去に住んでいた人の生活の名残りとさびれてしまった島を象徴しています。
戦争のために行くことのできない島というのは二人にとってどんな場所だったのでしょうか。
現在は日本人の立ち入ることのできる場所なのでしょうか。
そして、背景にあるのは戦争です。
このお話の中では、背景に徹しているのですが、とても重く感じました。
老夫婦がいるときに姿を現したのは日本軍でしょうが、戦争のさなかにこの島に入ったのは日本軍だけではなくソ連軍もいたのでは。
この絵本の舞台は北方領土地域でしょうか?
島に残るお地蔵さんだけが知っているのでしょうか。
複雑な思いで読み終えました。