かさ作りを続けてきた村に生まれたヌットちゃんは、絵つけを教えてもらって、自分もかさ作りに参加します。大好きなゾウの絵を描くけれども、伝統的な柄でないと商品にならないと言われてしまいます。
いやな気持ちにさせる人がいない、心あたたまるお話だと思います。
家族や村の人たちの様子をみて、自分もかさ作りに加わりたいと思う女の子。その才能をしっかり認められる大人。
ヌットちゃんは商品にならない絵をかさに描いてしまいますが、それをきちんと家族がさとし、ヌットちゃんも理解します。絵つけが仕事であると認識しているからです。小さいころから日常的に大人たちの仕事の風景を見てきたからでしょうか。
こうした話の流れが、この絵本の大切な部分だと思います。ヌットちゃんが「伝統は堅苦しい、私は自分の好きなように描く」と言ったら、このお話の魅力は半減してしまいます。個性と自分勝手を履き違えずに、仕事は仕事、趣味は趣味ときちんと区別したことで、結末の部分が生きてくるのではないでしょうか。伝統を重んじて産業を続けてきた村の人たちなんだなあという印象を受けました。
王さまもとても素敵で、きちんと話を聞いてくれる、やさしい人ですね。この人の存在が、ヌットちゃんはもちろん、読者にも安心感を与えてくれます。
大人たちがしっかり見て、ときには認め、ときには説明し、子どもとちゃんと向き合ってくれるところが好きです。(もちろん、素敵な絵を素直に描くヌットちゃんもとっても魅力的!) この絵本に出てくる大人のように、周囲の子どもたちに接したいと感じました。