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本当にうまいのはどちらか……。世紀の戦いが、今、はじまる!『うどん対ラーメン』 田中六大さんインタビュー

みなさん、麺類はお好きですか? では、「うどん」と「ラーメン」だったら、どちらがお好きですか? うどんとラーメン、本当に美味しい麺類はどちらか、お互いのプライドをかけて戦う、超バトル絵本『うどん対ラーメン』。この熱い絵本を描き上げた、絵本作家の田中六大さんにお話を伺いました。六大さんは「うどん派」なのか「ラーメン派」なのか、作品の真意に迫るインタビュー、スタートです。

うどん対ラーメン
うどん対ラーメンの試し読みができます!
作:田中 六大
出版社:講談社

「うどん」と「ラーメン」は、果たしてどちらがおいしいのか。宿命の対決が、ついに決着か!? 全てをひっくり返す、衝撃のラスト!

麺類は平等に愛しています!

絵本ナビに来ていただくのは『でんせつの いきものを さがせ!』(講談社)以来、3年ぶりです。あのときは、河童の姿で登場していただきましたが、今回は……。

「I Love うどん」です!

───そんなTシャツ、はじめて見ました。

世界で1枚しかない、一点ものです。今日のインタビューのために用意しました。

───すごい! 気合を入れてきていただきとっても嬉しいです(笑)。『うどん対ラーメン』ですが、ご自身がはじめて、絵と文章を描かれた作品なんですよね。

そうです。今までいろいろな方の文章に絵を描いてきましたが、念願叶って自作絵本を出版することができました!

───どういう経緯で、自作絵本第一弾を、この『うどん対ラーメン』にすることが決まったのですか?

きっかけは、ぼくがはじめて講談社の編集者さんから仕事の依頼を受けたとき。『しょうがっこうへ いこう』(文/斉藤洋)の絵の依頼だったので5年ほど前のことですが……、依頼を受けた電話越しで、ぼくはうどんを作っていたみたいなんです。それを編集者さんが覚えていて、「そろそろ、六大さんも自作絵本を作ってみませんか? 題材は……うどんで!」とムチャぶりしてきたんです(笑)。

───最初の電話でうどんを作っていたから、うどんの絵本を作ろうと提案するなんて、すごくユニークな編集者さんですね。田中さんはその話を聞いて、どう思ったのですか?

ぼくは基本、すべての麺類を平等に愛しているんですけど、うどんには特に思い入れがあります。昔、讃岐うどんブームの火付け役と言われている「麺通団」の『恐るべきさぬきうどん』という本を読んで、「本場のうどんが食べたい!」と、青春18切符で香川県に渡ったことがありました。2泊3日の間に10食くらい、讃岐うどんを食べまくったんです。編集者さんから「うどんの絵本を作りませんか?」と提案いただいたとき、そのときのことを思い出しました。

───そのときの熱意を、絵本に練り込もうと思ったんですね。

そうです! 最初はうどんの作り方を研究したり、全国のうどんを紹介するような学習要素のある内容も考えました。しかし、いろいろ考えるうちに、小さい子どもにも分かりやすくうどんの良さを伝えるにはどうしたらいいかを追求するようになり、ライバルを登場させて戦わせてはどうか……と思うようになりました。

───そのライバルとして選ばれたのが、ラーメンだったのですね。

はい。やはりラーメンは世代を問わず人気がありますから。うどんとラーメンで、作品の人気も相乗効果が狙えればと思いました。

───うどんの安定感のあるビジュアルに対して、ラーメンがとにかくインパクトが強くて……。目を奪われてしまいます。

うどんはいつものぼくらしいタッチで描いたのですが、ラーメンは今まで描いたことのないようなキャラクターにしたいと思ったんです。

───ラーメンのキャラクターというと、細い目と細くて長いひげのイメージがありましたが……。

そういうステレオタイプのキャラクターにはしたくなかったんです。日本のラーメンは、独自の進化を遂げていますから。それよりも劇画調にしたいな思って、全体的に彫りを深く描きました。

───常に眉毛にしわが寄っていて、顎も割れていて、一本一本白い歯が光っている。でも、口調がとても丁寧なのが面白いです。うどんはラーメンから果し状を受けて、どちらが美味しいか勝負することになります。この勝負がとても格好いいですよね。これは忍術? それとも妖術ですか?

どちらとも考えていないのですが、ベースにあったのは山田風太郎「甲賀忍法帖」です。これを読んだときに、いつか忍法を繰り出して戦うおはなしを作りたいと思っていました。それを今回の絵本で実行したんです。

───「うどんしばり!」や「チャーシューかぶせ!」など技の名前を言いながら、攻撃を繰り出すのがいかにも忍術っぽいです(笑)。この発想はどうやって思い浮かぶのですか?

忍術の研究はそれほどしていなくて、子どもたちにも分かりやすい一般的な忍術を、うどんとラーメンでアレンジさせました。空を飛ばせたいと思ったので、自分としては「きつねとびの じゅつ」が描けたのが嬉しかったですね。

───迫力のある忍術の応酬ではなかなか決着がつかず、ついにラーメンが秘密の術を唱えます。一体どんなモンスターが登場するのかと思ったら……。

ラーメンモンスター! これは最初、もっと怪獣っぽいビジュアルだったんです。でも、ラーメンが魔法陣から召喚しているので、もっと怪しい雰囲気が出た方がいいと思い、何度か修正を繰り返し、今の形になりました。

───これ、足はメンマで、手はレンゲなんですよね。

そうです。しっぽが麺で、耳はチャーシュー。顔はラーメンの具材でできています。額に「ラーメン」と書いてある当たり、作者の自信のなさが表れていますね……(笑)。


ラーメンモンスターの習作(左)はもっと怪獣に近かったようです。

───最初はちょっと不気味に思うのですが、しばらくするとどことなく愛嬌があるように見えてくるのがとても不思議です。そして、ラーメンモンスターに対抗すべく、うどんが呼び出したのが「うどんやの おじさん」。またすごい、キャラクターが出てきましたよね。

これも最初は、怪獣に対抗してうどんロボの予定だったのですが、ラーメンモンスターがあのようなビジュアルになったため、ロボではビジュアルで負けてしまうと思い、もっとインパクトのあるキャラクターをと考えました。

───おじさんの表情が基本的に無表情なのですが、攻撃するポーズが格好良くて、凛々しく見えてきます(笑)。相手の攻撃を受けたことに対する感想が、すごく褒めているように感じるのは気のせいでしょうか?

うどんの海老天に対してラーメンは「ころもに つゆが しみこんで おいしい!」と言っていて、ラーメンの味玉に対して「あじが しみこんで いるのに、はんじゅくで とろとろで うますぎる!」と言っちゃってますものね。最初はそれほどお互いをほめていなかったのですが、どんどんエスカレートしてしまって……。グルメマンガを意識していたんだと思います。

───読んでいるとすごくお腹が空いてきて、困ります(苦笑)。夕日を背に、ラーメンモンスターとうどんやのおじさんが対峙している姿も、すごく緊迫していますよね。一体、この世紀の対決は、どんな結末を迎えるのか……と固唾をのんで見守っていたのですが、意外な結末でビックリしました。

元々、時代劇でよくある「御前試合」のような終わり方を考えていたので、第三者が仲裁に入る予定ではいました。ただ、この二人の間に入れるのはだれか……と考えたとき、自然とそばが出てきたんです。

───このそばも、元々は違うキャラクターだったりしたのですか?

そうですね。実は、仲裁役は宇宙人の予定でした。

───え、宇宙人?

はい。急に出てきて何もかもめちゃくちゃにするキャラクターとして面白いかなと思ったんです。でも、制作中にラフを見ていただいた書店員さんから「そばは出てこないのですか?」と感想をいただいて、ためしに描いてみたんです。そうしたら、思った以上にしっくりきてそば以外ありえないと、急きょ変更しました。


うどんとラーメンを仲裁する役割。ラフでは宇宙人だったのだそうです。

───そばが宇宙船から降りてくるのは、元々宇宙人を出す予定だったことの名残なんですね。

そうかもしれませんが、もしかしたら宇宙から来たそばなのかもしれませんよ。そうすると、うどんとラーメンも宇宙人かもしれません。

───食べ物絵本かと思ったら、実はSF絵本だった……なんて、すごいオチですね(笑)。

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田中六大(たなかろくだい)

  • 1980年、東京都生まれ。多摩美術大学大学院修了。漫画家・イラストレーター。漫画に『クッキー缶の街めぐり』(青林工藝舎)、挿画に『ひらけ!なんきんまめ』(作・竹下文子/小峰書店)、「日曜日」シリーズ(作・村上しいこ/講談社)、『4月のおはなし ドキドキ新学期』(作・はやみねかおる/講談社)、絵本に『だいくのたこ8さん』(作・内田麟太郎/くもん出版)、『ねこやのみいちゃん』(作・竹下文子/アリス館)、『しょうがっこうへ いこう』(作・斉藤洋/講談社)、『おすしですし!』(作・林木林/あかね書房)、『ぼくは ねんちょうさん』(作・サトシン/小学館)など。作・絵ともにオリジナル作品に『でんせつの いきものを さがせ! ネッシー・ツチノコ・カッパはどこだ?』(講談社)がある。
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