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《スペシャルコンテンツ》突撃レポート

2011.10.05

未訳を含む幻のシリーズがついに刊行!
「ブルーノ・ムナーリの1945」シリーズのみどころについて、お話を伺いました。

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美術・デザイン・絵本など、幅広い分野で活躍し、独創的な作品をのこしたイタリアのアーティスト、ブルーノ・ムナーリ。
その個性的で洗練された絵本作品の中でも、少し雰囲気が違うのが今回ご紹介する「ブルーノ・ムナーリの1945」シリーズ、日本語版で待望の発売です。
ムナーリファンの方はもちろん、まだムナーリの絵本に触れたことのない方でも一目みただけでワクワクしてしまうような作品がこちらのシリーズなのです。一体どんな内容なのでしょう?
その魅力について、担当編集者の方にお伺いしました!

『どうぶつ うります』

「どうぶつ うります」
作・絵:ブルーノ・ムナーリ
訳:谷川 俊太郎
出版社:フレーベル館

フラミンゴやアルマジロなど表紙を飾る珍しい動物たちが大売り出し。何をすすめても買おうとしない、お客の望みの品とは?ユーモアと驚きのラスト。

『たんじょうびの おくりもの』

「たんじょうびの おくりもの」
作・絵:ブルーノ・ムナーリ
訳:谷川 俊太郎
出版社:フレーベル館

ぼうやのプレゼントを抱え家路を急ぐお父さん。あと10キロのところで車が故障して…。次々変わる乗りもの、家までの時間や距離の変化が巧みにしかけとマッチした名作。

─── まず、シリーズ名がとても気になってしまいます。「ブルーノ・ムナーリの1945」、どんな由来があるのでしょうか?

1945年、5歳の息子へのプレゼントに絵本を探したところ、よいものが見つからず、ならば、とムナーリが自ら手がけたシリーズです。息子のアルベルト・ムナーリさんの来日時のインタビューによると、当時は子どものための本といっても大部分が文章で、挿絵がいくつか入っているような読み物が中心だったようです。小さな子どもが楽しめるようなものではなかったんですね。アルベルトさんは、「まるでおもちゃのような父の絵本」と言って、当時の喜びを語っています。


▲それぞれのページの大きさや形がみんな違うのです!

─── 1945年当初、こんな形式の絵本を出版するというのは簡単なことではなかったのではないでしょうか?

1945年当時、10冊の絵本が作られたようですが、実際に刊行されたのは7冊です。敗戦後まもない頃ですから物資も不足していたでしょうし、このような一冊一冊違った手ばりしかけの入った絵本を出そうとしたムナーリも、出した出版社もすごいと思います。残る3冊のうち2冊は、1997年に出版されましたが、もう1冊は、原画が行方不明になったままということで、現在、全部で9冊のシリーズになっています。

─── 最近では、複雑なしかけをふんだんに使った、海外の豪華な絵本が日本でも手に入りやすくなってきましたよね。
ムナーリのしかけ絵本の魅力はどんなところでしょう?

きりのなかのサーカスきりのなかのサーカス
ムナーリのしかけ絵本には、デザイナーらしい洗練された合理性があります。文字や絵だけでは伝えきれない感覚を、色や手触り、サイズの違う紙などを使って、いかにシンプルに表現するかが実に巧みなんです。より複雑に、豪華にしかけを盛り込んでいく絵本とは、逆の作り方ですね。霧に包まれた街の中を歩く感覚を、トレペの紙で綴った『きりのなかのサーカス』は、とてもわかりやすい例だと思います。
1945シリーズ『たんじょうびのおくりもの』では、家路を急ぐ主人公のようすが入れ子状になったミニページに描かれています。前半は、乗り物がだんだん小さく、家までの距離も短くなるにつれて、ページのサイズも小さくなっていきます。ページが大きくなっていく後半では、だんだん家が大きく近づいてきます。一番小さくなったページから、大きくなっていく切り替えのところに、どういう場面をもってきているかが面白いところですが、ちょうどそこで、主人公は乗り物を使わずに歩き出します。徒歩になったとたんに、急に時間や距離が長く感じられる、そういう臨場感までもが見事に伝わってきます。空間や距離、時間などの変化とページのサイズの変化が感覚的にぴったりマッチするように考え抜かれているんですね。


▲しかけの効果を存分に生かして進んでいくお話に注目!

─── 長い間手に取ることが難しかったこのシリーズですが、ついに日本語版で購入することができる!本当に嬉しいばかりです。出版されようと思われたきっかけを教えていただけますか?

ムナーリの絵本を私自身が好きだったのが最初の理由です。紙やしかけが特殊なぶん価格も高めなせいか、日本では、残念ながら一部の限られたファンのための絵本という印象が少なくありません。その状況は、ムナーリが生きていたら、さぞがっかりするだろうな、と思いました。
ムナーリは絵本作家以外にもさまざま顔をもつアーティストでしたが、芸術を限られた人たちだけでなく、もっと広く楽しめるものにしたいという思いを強く抱いていたようで、とくに晩年は子どもの創造教育に尽力しています。
ですので私自身、ムナーリが本来、一番見せたかった子どもたちの手元に、絵本が届くようにしたいという思いが強くありました。

アンパンマンでおなじみのフレーベル館か出版するというのは、少し意外に思われるかもしれませんが、社名となっているフレーベルは世界で初めて幼稚園を作った、子どもの創造教育の父と呼ばれる人物なんですよ。ムナーリの絵本を通して、そうした「フレーベル館らしさ」も知ってほしい、そういう気持ちもありました。

─── 実際に日本で出版されるにあたって、一番大変だったのはどんな部分ですか?

1945シリーズは、日本の児童書市場で受け入れてもらうには、クリアすべき難題がいくつもありました。イタリア語の原本はペーパーバックで、日本での販売価格は今回の定価の3倍近くもします。綴じ方も安全面で懸念がありました。これを安全で丈夫なハードカバー製本にして、なおかつ定価をうんと下げなくてはいけない。ムナーリの絵本はどれもイタリア国内生産が条件となっているので、これをなんとか日本と中国で作れるよう、品質的に信頼してもらえる見本を作って交渉を重ねる必要がありました。9冊全部違ったしかけなので、なかなか一筋縄ではいかず、没になった束見本は山ほどあります。
1945シリーズは、イタリア語のほか、英語と仏語版が出ていますが、ハードカバーは日本語版だけのオリジナルです。見返しや扉もないハードカバーの絵本なんて、少し変わっているかもしれませんが、そこはあえてそのままにしています。原本と同じく、ムナーリが息子のためにお手製で作った雰囲気をなるべく残したかったんです。


▲装丁もとても美しい仕上がりです。

もうひとつは、言葉の問題です。ムナーリはビジュアル的な要素で感覚的に何が伝えられるかを常に模索していたような作家ですから、正直、文章のほうは、少しそっけなかったり、ニュアンスが通じにくいところがあったりします。それを小さな子どもにも響くことばに置きかえるには、詩人の谷川俊太郎氏のお力がどうしても必要に思えました。リズミカルで美しい日本語を、ぜひ、声に出して読んでみてください。海外版にはない魅力を感じてもらえると思います。

───  「ブルーノ・ムナーリの1945」シリーズのみどころを教えてください!

1945シリーズは『きりのなかのサーカス』のような、極めつけに洗練された作品とは、また違った味わいがあります。きっと息子が喜ぶ顔を思い浮かべながら、今度はどんなふうに遊ぼうか、これはびっくり箱、こっちは手品、これはおやすみの時間に…と、いろいろなサプライズを考えているうちに10冊も出来ていた…そんな父親としてのあたたかいサービス精神が1冊1冊、手にとるほどに伝わってきます。子どものわくわく感を盛り上げるフリップがたくさんありますから、それをめくりながら、ムナーリが息子と一緒に遊んだように、子どもたちとのコミュニケーションを楽しんでほしいと思います。

───  美術・デザイン・絵本など、アーティストとして幅広い分野で活躍したムナーリ。そんな彼にとって、"絵本"というのはどんな存在だったのでしょう?

ムナーリの絵本は、文字のないものや、木や布など紙以外の素材を使ったものなどさまざまです。私たちのコミュニケーションは、言葉や文字によるところが圧倒的に多いですが、ムナーリは、それ以外の要素、視覚や触覚を通じて何を伝えられるかを、本の形をした作品の中で実際に見せてくれます。
本といえば「文字の入れ物」なのが当たり前で、自ら作らなければ息子のための本すら見つからない時代だったからこそ、あえて本の形にして、見せることにこだわっていたんじゃないでしょうか。
もうひとつは、本というメディアの普遍性に注目していたんじゃないかと思います。CDや電話など音に関するメディアの変遷に比べると、本はやっと最近、電子書籍が出てきた程度で、ほとんど形が変わっていません。
ムナーリが残したさまざまな仕事のなかで、絵本の作品が最もよく知られ、時を経ても愛されていること、そのものが、絵本のコミュニケーション力をなによりもよく証明しているように思います。

───  ありがとうございました!
「ブルーノ・ムナーリの1945」シリーズが全巻揃うのが今から本当に楽しみです。


▲裏表紙と帯より。9冊全巻そろえると背表紙にムナーリのサインが…!!

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ブルーノ・ムナーリ【Bruno munari】

  • ミラノ生まれ。美術・デザイン・絵本など、さまざまな分野で独創的な作品を残したアーティスト。絵本・知育玩具・造形ワークショップを通し、子どもの創造性を刺激し育てるための実践を重ねた。著作に『きりのなかのサーカス』『暗い夜に』『木をかこう』『太陽をかこう』など。


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