しょうたは小学校3年生。お父さんの仕事の都合で、近いうち引っ越すことになりました。
引っ越しすることを親友のかおるに伝えると、あることを提案されます。
それは、今年の水泳大会のリレーに出ること。
だけど、しょうたは、1年生のときに遊園地のプールでおぼれてから、水が大の苦手なのです。
「かならず ぼくが しょうたを およげるように するから」
かおるの強引さに負けて、しょうたの挑戦がはじまるのですが――。
顔を水につけること、浮くこと、バタ足……。
かおるがつきっきりで教えてくれたおかげで、少しずつ、しょうたは水に慣れていきます。でもリレーで泳ぐクロールは、あっさりマスターできるほど簡単ではありません。やっと浮けるようになったら、息継ぎがうまくできなくておぼれたみたいになってしまう。思うように泳げなくて、 しょうたは焦ったり落ち込んだり。
さらに、生まれ育った町を出ること、かおると離れ離れになってしまうこと、見つけたノラ猫「シロ」のことなど引っ越しに対する心の重苦しさも、水泳大会への不安の上に重なっていきます。
丁寧に描かれるしょうたの気持ちにひきこまれて、どんどんページをめくってしまうことでしょう。友達っていいな、そう思える場面もたくさんあります。
上達する大変さがじっくり書かれているので、運動が苦手な子は特に共感して読めるのでは?
かおるの水泳指導法が丁寧でわかりやすいのもお話の大きな魅力です。お話のなかに、運動ができるようになるヒントやコツが書かれているのも、「しゅくだい」シリーズのポイントですね。
さて、しょうたはお話のラスト、無事に水泳のリレーで泳ぎ切ることができたのでしょうか?
しょうたの頑張りに、子どもたちは、自分もできるかもしれないという勇気をもらえるはず。
完璧じゃなくてもいい、あきらめずに練習したら自分が思っているより、ちゃんとできるようになる! 自信が持てない子どもたちに向けて、そんな励ましのメッセージが本書から聞こえてくるようです。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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7月に入ってすぐ、引っこしが決まったと友達のかおるに伝えた。かおるとは幼稚園の時から仲良しで、今の3年生で同じクラスになって喜び合った。
小学校1年生の夏、ぼくは遊園地のプールでおぼれたことがある。その時からプールが怖くなってしまった。それなのにかおるは、水泳大会のリレーの選手にぼくを出したいと言い出した。それからぼくのクロールへの挑戦がはじまった。
まずは、水に浮く練習からはじめた。プールが怖かったぼくは、水に浮くことができただけでうれしかった。次にバタ足を練習した。最初は、バチャンバチャンと大きくけっていたが、だんだんと水をける感覚がつかめてきた。そしていよいよ、「手かき」をつけて泳ぐことになった。ところが、今まで順調だったのに、手をつけたことで上手く泳げなくなって……。
運動が苦手な子でも、頑張って練習することの大切さを描いた「しゅくだい」シリーズ。水泳が苦手な子におすすめの一冊です。
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