マリーはクリスマスにくるみわり人形をもらいました。すてきな人形です。ところが兄のフリッツがかたいくるみを割らせて、くるみわり人形のあごがこわれてしまいます。マリーは自分のドレスのリボンをとって、くるみわりのあごを支えてやりました。その夜、マリーはくるみわりが心配でずっとそばについていました。大広間の時計が深夜12時を知らせたとき、キイキイ、チューチュー! 壁からものすごい数のネズミが出てきたかと思うと、バキバキバキッ! 床を突き破り、七つ頭の巨大なネズミの王があらわれました。すると、寝ていたくるみわり人形が起き上がり、他の人形たちといっしょにネズミに闘いを挑んだのです。しかし、ネズミたちがくるみわりのマントをつかんで引きたおし、ネズミの王が襲いかかろうとします。マリーが夢中で自分のくつをネズミの王に投げつけると、くつは命中し、ネズミの王は倒れて動かなくなり、ネズミたちも逃げていきました。「マリーさん、助けてくれてありがとう」声のほうに振り向くと、ひとりの若者が立っていました。若者は人形の国の王子で、ネズミの王の呪いでくるみわりの姿に変えられていたのです。若者はお礼にマリーを人形の国に招待します。たくさんのごちそう、人形たちの踊り。それは美しいものでした。マリーはいつしか眠ってしまい、目を覚ますと自分の部屋のベッドの上でした。そばには、こわれたあごがなおったくるみわり人形がいます。「くるみわりさん、ありがとう。わたしあなたをずっとずっとたいせつにするわ」
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