1711年、朝鮮から30年ぶりに「通信使」と呼ばれる使節団がやってきた。総員500名あまりの人々が海路、川船、陸路を伝い、江戸まで進む。大阪をはじめ沿道での大歓迎を受け、使節団と交流した人々の様子を描く絵本。
巻末に解説・作者の思いが書かれている。絵本の話の前後の時代背景などがわかり、理解が深まる。
この話は、庶民には情報が届かなかった時代に、外国人がやってくることに対する素朴な反応を描いている。
過去にあった戦争で大変な思いをした祖先の気持ちを大事に持ち続けている朝鮮の使節団の人と、おおよそ100年たってすっかり忘れてのんきに歓迎している日本の庶民たち。朝鮮から連れてこられた人の子孫が、祖先の国の人に会うためにわざわざやってきて思いを果たす様子…いろんな人の思いが、ひとりひとりに描かれ、それぞれの人生や思いがしのばれる。
国と国とが、政治の問題、戦争などがあったとしても、庶民の交流は、単純に人と人との出会いなのだと思う。
いろんな問題が未解決でいまだに残っている朝鮮半島と日本であるけど、私は隣の国の人たちと温かい交流ができると思っている。
外国から来た立派な使節団を見て、一心に追いかけた少年たちは、きっと素晴らしい未来を想像したのだろう。
素敵な思い出を胸に、時代がどんどん変わっていく風を感じたのだと思う。
多くの人々が、いろんな刺激を受けて、新しい風を感じたり、知っている世界が広がっていく感動を覚えたと思うと、本のこちら側で見物している読者の私も、感動が伝わってきた。
世界にいろんな人があって、いろんな問題があったとしても、明るく楽しい未来を作っていける交流ができますように!
この本は大人になってから読むと、深く心に響くと思う。