小児科病棟で病と闘っている子供達を日々見ているお母さんにとって、健康な竜也は手がかからず、自分で何でもやってくれる筈。
だから構ってやれない。
「大きくなったら、きっと分かってくれる」
竜也のお母さんはそんな風に考えていたのかもしれません。
けれど竜也の絶望は深く、数々の問題行動に出ています。
それは半分無意識のうちに心から出ているSOSに他なりません。
「有難う」「世話をしてやれる余裕がなくてゴメンね」「愛している」と、ほんの少しでも言葉をかけてやることが出来れば、きっと竜也は自分なりに苦しみを昇華して、母親を温かい目で見てくれるようになるのでは・・・ そう思わずにはいられませんでした。
そんな苦しい心の内を抱える竜也と次第に仲良くなる雄一。
彼自身も大きな後悔を胸に秘めていて、その後悔から抜け出す一歩が踏み出せずにいました。
だから竜也の意外過ぎる計画に惹かれたのでしょうね。
三年生という、自我が確立しつつある年齢ながら、まだまだ子供らしさも残る少年達が、一歩を進むためにもがく姿は、時に理解しがたく、けれども愛すべきものなのだと感じられました。