作者の他の作品と同じく理論社から出ている作品ですが、「モンタギューおじさんの怖い話」シリーズとは少し違い、長編ホラー物語でした。
(邦訳者もシリーズの三返律子さんから、西田圭子さんに代わっています)
物語が長い分、短編の切れ味とは違った伏線の引きかたが、少々間延びした感じにも思えましたが、ホラー的ドキドキ感は健在です。
舞台はやや過去に戻った19世紀のイギリスです。
母親が死に、天涯孤独となった主人公の少年マイケルは、(生前)父親が命をかけて守ったスティーブン卿の招待を(致し方なく)受けて、スティーブン卿の住んでいる「ホートン・ミア館」でクリスマスの休暇を過ごすことになります。
前半では登場人物は至って少なく、館はシーンと静まり返った暗い場所でしたが、マイケルが打ち解けていったたこともあって、いく人かの使用人たちが登用してからは、物語が色づいてきたような気がしました。
今回は○○と思っていたら○○だった。的な人間像に迫る部分が多かったです。(こういうところも実は伏線なのだと思います)
そして、今回も舞台の背景の描きかたがものとても詳細で、マイケルが「ホートン・ミア館」内外を探検しているシーンなどは、地図でも見ながら説明してくれているような、そんな錯覚に陥りました。
また、19世紀のイギリスでは水洗トイレが出始めたばかりだったことや、南アメリカ大陸に住んでいる人たちがヨーロッパでどのように思われいたとかなど、歴史的な背景も見られて面白かったです。
読んでいるとき「あれ?」「あれ?」と、思わなくもなかったのですが、最後の訳者あとがきを読んで、やっぱり!と、膝をたたいてしまったことが1つありました。
この最後(実は最初から存在していた)の“なぞ”こそ、作者がこの作品に込めたミステリーホラーだったのかもしれません。
とても読みやすい児童向けのミステリー・ホラーです。
小学校の高学年くらいからお薦めします。