私はこの本が好きで、春先のお話会では必ず使います。すごく正直に言うと、子供たちから「わかりやすい」反応が返ってくる本ではありません。だから、果たして子供たちがどう受け取ってくれているのか良くわかりませんでした。
けれど、この本を読んだあと、息子はちょっとだけ、自然の営みに敏感になっていたりします。普段は気づかないようなささやかな変化、雑草が花をつけることだとか、きょうはハチが多いね、とか、そんなことをぽつぽつ語ったりします。それが、この本の影響だ、とまでは言い切れませんが、読み終わった時に何か、じんわりとこころに染み渡っているような気持ちになることは、大人の私にもよくあります。
快適な環境に慣れている現代の子供たちにとって、春を待ちわびる気持ち、はもしかしたら、あまり馴染みがないかもしれません。けれど、待ち続けたものがもう、すぐそこまで来ている兆しを感じる時、その経験は同時に、次の辛い時期を耐え忍ぶ強さをも与えてくれると思うのです。人にはいつも、希望が必要で、まして子供たちならなおのこと。
地味な本ですが、厳しい冬を眠って過ごしていた動物たちがささやかな春の訪れを小躍りして喜ぶ姿は、とても和やかな、平和な暖かさでこころを満たしてくれます。そしてその暖かさこそが、こころのつよさを育んでくれるのだと、私は思っています。