地味な表紙だったのですが、ロバート・マックロスキーの作品なので読んでみたら、これが驚きの内容で読後感は、素晴らしいの一言。
やはり、1942年のコールデコット賞受賞作品でした。
マックロスキーは、他の作品でもコールデコット賞を受賞しています。
お話は、かものマドラード夫妻が巣を作る場所を探すシーンから始まります。
場所はボストン。
上からボストンの街を巡るのですが、なかなか良い場所が見つかりません。
最初に公園に降り立つのですが、何とも公園の風情が素敵です。
1940年代の古き良きアメリカの人々のゆったりとした空気がたまりません。
公園から、ビーコン・ヒル、ルイスバーグ広場と移動して、チャールズ河の中洲に落ち着くのですが、最後にボストンの地図があって、二度楽しめます。
その後、8羽のコガモが生まれるのですが、それぞれに名前があって、実に表情が可愛らしく描かれています。
圧巻なのは、チャールズ河から、マラードさんの待つ最初の公園への行進のシーン。
マラード奥さんを先頭に8羽のコガモも並んで歩くのですが、おまわりさんを始めいろいろな人の協力があって、漸く辿り着きます。
マラード奥さんは、そんなことは露知らずという感じが微笑ましく思えました。
親子の絆、人間とのふれあい、そこに流れる心地よい空気など、物語として秀逸です。
茶だけで描かれた絵も、実に精緻なもの。
ロングセラーというものは、鮮やかな色合いの絵とか突拍子もない話ではないことを諭してくれる優れた絵本だと思います。
バージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」の1年前の作品ですが、もっと読まれることを期待したい一押しの作品です。