『人間の風景の面白さとは、
私たちの人生がある共通する一点で同じ土俵に立っているからだろう。
一点とは、たった一度の一生をより良く生きたいという願いであり、
面白さとは、そこから分かれてゆく人間の生き方の無限の多様性である。』
(―「極北に生きる人びと」‘生まれ持った川’より)
星野道夫のアラスカの詩三部作のうちの1冊で
星野道夫がそれまでに出会った、
極北のアラスカに生きる人びとに焦点をあてて書かれたものです。
人の生き方とは、こんなに多様性のあるものなのだと
深く感動しました。
作品中で(星野道夫の友人)アル・スティーブンスが
「ミチオ、誰もが自分の人生を書きつづる力があったらいいだろうな。どんな人間の人生も語るに値するものだと思う・・・。」
と言っています。
生きて行くということは、楽しいことや幸せなことばかりではありません。
時には果てしない悲しみや苦しみの渦に巻き込まれてしまうことも。
それでもひたむきに生きる極北の人々。
そういった人々が発する魂の輝きを
星野道夫は同じ土俵に立ってしっかり捉え、見つめ、耳を澄まし、
愛情を込めて綴ったのが、この本なのだと思います。
今を生きる全ての人への
応援歌のようにも感じられる素晴らしい1冊です。