「だれでも うまれた日、たんじょうびは しっています。
でも、じぶんが 死ぬ日をしっているひとは だれも いません…」という冒頭と、真っ黒な表紙がインパクト抜群の絵本『シニガミさん』。作者は『おまえうまそうだな』(ポプラ社)や『にゃーご』(鈴木出版)など、数々のヒット作を生み出す絵本作家・宮西達也さんです。今回、『シニガミさん』の続編が発売されると聞き、宮西さんのアトリエにお邪魔しました。
かねてより宮西さんと親交の深いカナガキ事務局長によるスペシャル対談です。
●「実は『シニガミさん』をしばらく読めなかったんですよ・・・」(Byカナガキ)
カナガキ:宮西さんとは絵本ナビ初期の頃にお会いしてから、対談をさせていただいたり、僕がおはなし会で宮西さんの絵本を読ませていただいたりと、お世話になっているのですが、実は『シニガミさん』を最初見たとき、「宮西さんの新作、表紙も真っ黒だし、怖そうだな…」と思って、しばらく読めなかったんですよ。
宮西:まずこのビジュアルにインパクトがありますからね(笑)。
カナガキ:表紙もそうですが、「シニガミさん」というキャラクターが絵本の中ではかなり異質だと思ったんです。そのシニガミさんもドクロで鎌を持っている姿ではない、姿を自由に変えることができたり、生死を判断できたりと今までのイメージを覆すような設定で、そこがすごく面白い!…でもかなり冒険しているなと感じました。そもそもシニガミさんという絵本を作ろうと思ったきっかけはなんだったんでしょうか?
宮西:「シニガミをキャラクターにして絵本を描いてほしい」と編集さんから持ちかけられたんです。僕は常に今までにないものをやっていきたいと思っているので、冒険しているとは全然思わなかったですね。「あ、新しいことができる、やったー!」と思いました(笑)。
カナガキさんも仰っていたように、シニガミさんって、一般的にはどくろの顔して鎌を持っていて、人の命を刈るような怖いイメージがあると思うんですよ。でも僕の中では全くそのイメージはなかったんです。それよりも、もっと平等というか、客観的に命を見つめているキャラクターで「自分がいつ死ぬかなんて、誰もわからない、“死”というのはそういうものですよ」と静かに伝えるイメージを持っていました。
カナガキ:宮西さんの作品は子どもはもちろん、大人が読んでも共感し、感動する部分があると思うんですが、この『シニガミさん』はその中でもより、深く考えることのできる作品だと思いました。僕自身、すでに父を亡くしているのですが、当時は親父が死ぬということを現実として受け止めることがなかなかできなかったんです。でも、日が経つにつれて、親父の死を通して初めて、真剣に生きること、死ぬってことを考えてた気がするんですよ。そんな死を考えるきっかけを、『シニガミさん』から大人も子どもも感じてくれるんじゃないかと…。
宮西:そう感じてくれたら僕も嬉しいです。今の時代、「死」が現実からすごく遠いものになっていると思うんです。昔はおじいちゃんおばあちゃんが身近にいて、死に触れることが少なからずあった。でも今は自宅で看取ることはほとんどないですよね。その反面、ゲームでは平気で人を殺したり、キャラクターが死んでもすぐにリセットできたり…。そんな風に死が現実から離れているから、生きることの意味も分からなくなっているんじゃないかな…と思うんです。生きるって、辛いことも沢山あるけれど、結構楽しいんですよ。生きていてよかったと感じてもらいたいから、『シニガミさん』では、ストレートに生と死を描きたいと思っています。
…ちなみに、カナガキさんは、どのタイミングで『シニガミさん』を手に取られたんですか?
カナガキ:絵本ナビのユーザーレビューを拝見していると、どうも自分が思っているのと違いそうだぞ…と(笑)。それで、おそるおそる読んでみたんです。そうしたら、とても暖かいお話で、良かったー!って。
宮西:(笑)。次からは是非、先陣を切って読んでくださいね。
カナガキ:はい…(笑)。