新刊
ごんぎつね

ごんぎつね(ポプラ社)

いたずらばかりしているきつねのごんは、兵十のたいせつなうなぎを盗んでしまいます。その後、ごんは兵十のために罪のつぐないをするのですが・・・。

絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  おなかがすいちゃう!おいしくて楽しい仲間たちのお話「パンダのポンポン」シリーズ 野中柊さんインタビュー

大好きな人といっしょに食べる幸せ

わたし、ポンポン・シリーズの中で、「どうしても、この食べものを書きたい!」と思って、ストーリーでなく食べものから先に考えたのは、ひとつだけなんです。それは餃子!

───『夜空のスター・チャウダー』で、レッサーパンダのレッドが作る餃子ですね。こまかく刻んだ炒り卵とエビを入れた餃子……何とも美味しそう!
長崎さんも、メールインタビュー(*前ページ)の中で、描くのが楽しかったのは「餃子」と答えてくださっていましたね。
野中さん、餃子がお好きなんですか?

大好きです。最近、わたしの人生における、何度めかの餃子ブームが到来していて、あっちのスーパー、こっちのスーパーへ出かけて、いろんなメーカーの皮を買ってきて試してみたり、包みこむ具にバジルと松の実を入れてみたり、パクチーを入れてみたり、変わり餃子にもあれこれチャレンジしてみました。でも、やっぱり王道の、オーソドックスな餃子がいちばん美味しいんですけどね。
調味料に、甜麺醤(テンメンジャン)、豆板醤(トウバンジャン)、オイスターソースを入れたり、キャベツ派か白菜派か、ネギ有りと無しではどっちがいいかとか、本気で考えてやっています。プロみたいにひだひだがきれいにそろった餃子を作りたくて、YouTubeを見ながら、真夜中にひたすら包んでいることも。もはや「餃子道」を突き進んでいる感じ。夜な夜な精進しています(笑)。

───よくお料理をなさるんですか?

そうですね。気分転換を兼ねて「なにを作ろうかなあ?」と考えるのは楽しいです。上手にできないと「ああ〜!」と落ち込んで、逆にストレスになったりするんですけど(笑)。


こんがり、ぱりっ。熱々のギョウザ。(『夜空のスター・チャウダー』より)

───作品にお料理がたくさん登場しますが、思いつかなくて困ることはないですか?

ときどきありますよ。たとえばポンポンでは、同じ料理が重複して出てこないように、次はなにがいいかな? と手持ちの料理本のページをめくったり、インターネットで調べたりはします。でも、あまり悩まないですね。それから、1冊の中に3話入っているので、もちろん、そのバランスも配慮します。ささっとその場で作る料理は、たとえばスープのように何度か出てくるものもありますが、一言でスープといっても、さまざまな種類のスープがありますからね。

───『クリスマスあったかスープ』で、ポンポンがトナカイに作ってあげた、ミルクと野菜のスープ。そして『クッキー・オーケストラ』の中の「マシュマロ・ファイアー」で、キャンプの夜に作るミネストローネスープ。どちらも食べたくなります〜!

ミネストローネは『ポンポン クック ブック』に作り方が載っていますよ。8巻めまでの料理の中から、お母さん、お父さんが子どもたちと一緒に作りやすそうなものを選んで、レシピを載せています。

ポンポンクックブック
作:野中 柊
絵:長崎 訓子
出版社:理論社

「パンダのポンポン」シリーズのコックさん・ポンポンが、お料理のひみつを教えちゃう。オムライス、フレンチトースト、カレー、アイスクリーム……本の中で作ったレシピを、ポンポンのアドバイスともに。お料理の楽しさに出会える絵本レシピ集。


オムライスの材料とレシピ(『ポンポン クック ブック』より)

───レシピも野中さんが考えたのですか?

はい。ふだんは適当に目分量で料理しているので、レシピ作成のために計量したり、「中くらいの玉ねぎって、どれくらいの大きさ?」と悩んだり……。物語を書くよりよほどたいへんでした。でも、親子でお料理をするきっかけにしていただけたらいいなあ、と思って。

失敗しても成功しても、一緒に作って食べたら、楽しいですよね。手に入りやすい食材、なるべく簡単にできる手順を試行錯誤して完成させたレシピなので、ぜひ、お料理してみてくださいね。そして、書かれてあるレシピにこだわらず、どんどん自分たちで工夫して、さらに美味しい料理ができるようになったら、素敵だと思います。自慢のお料理ができたら、ぜひとも、ポンポンとチビコちゃんに知らせてほしいな。

グラタンに出てくるベシャメルソース(ホワイトソース)と、ミネストローネスープに出てくるトマトソースは、まとめて作ってタッパーウェアに小分けにして、冷凍庫に入れておけば、保存も利きます。パスタや肉魚料理に、いろいろと応用して使っていただけたら、嬉しいですね。

───野中さんは子どもの頃から食いしんぼうだったんですか?

そうでもないんです。子どもの頃は好き嫌いが激しかったし、どちらかといえば食が細くて。食べることを苦行のように感じていた時期もあります。「三度のごはんより好き」なんて表現を耳にすると、三度のごはんより楽しいことなんて、いっぱいあるじゃない? と思っていました。給食の時間なんて、ほんとうにもう、つらくて。 でも、クックブックを眺めるのは、好きだったんですよ。わたしが子どもの頃に児童文学のクックブックブームがあって、くまのプーの料理本とか、よく手にしていました。料理しなくても、レシピを読んでいるだけでも楽しいですよね。

物語やクックブックを読んで、「料理をイマジネーションで味わう」経験は、かけがえのないことだと思います。『大きな森の小さな家』のバターを作るシーンで、人参をすりおろしてバターに色をつけるのを、「なるほどなあ、すごいなあ」と感心したり。イギリスのミンスパイという、それまで聞いたことのなかったパイにあこがれて、「どんなパイなんだろう。大人になったら、ぜったいに食べてみたい!」と思ったり。実物を見たことも、食べたこともなくても、美味しそう! という感じは、子どもたちに伝わると思います。

───その後、食いしんぼうになるきっかけがあったんですか?

20代前半かなあ。好きな男の人ができて、その人と一緒にごはんを食べていて「美味しい!」と思ったときの喜びがすごく大きかったんです。目の前で、ぱっと扉が開かれた感じ。ちょっと大げさなようだけど、「ようやく、わたしは世界を受け入れ、世界もわたしを受け入れてくれた」って気がしましたよね。「大好きなだれかと、美味しくごはんを食べるって、ほんとうに幸せなことだなあ」と。駅の立ち食いそばを食べていたって、彼と一緒だったら、ものすごく美味しく感じられましたからね。その後は、だんだん味覚が開発されていきまして、今はひとりで食べても、美味しいものは美味しいです(笑)。

───初巻発売から13年。パンダのポンポンシリーズは、これからもきっと楽しくつづいていくのでしょうね。お話を書くときに心がけていることはありますか?

ポンポン・シリーズを書きはじめたばかりの頃に、「現実の、この世界がどのような場所であっても、これから、どんなふうに変化しても、ポンポン・ワールドの世界観は変わらない。幸せで、のんびり、のどかなまま、書き続けていこう」と心に決めたんですよ。実際にこの13年のあいだに、日本も、世界の状況も、ずいぶんと変わってしまいましたが、だからこそ、なおのこと、ポンポンたちの平和で素朴で和気藹々とした雰囲気は、子どもたちに向けての、たいせつなメッセージになりうると思っています。

お料理をしてみんなで食べるって、人生の基本の基本。幸せって、すごくシンプルなことのはず。美味しいものが好き、友達が好き、家族が好き、みんなでわいわいするのが好き、そうやって日常を味わうことの素晴らしさを伝えていきたいです。

───日常の中に、美味しいお料理やおやつがあって、となりには大好きな友だちがいて……。「幸せってこういうことじゃない?」と、ポンポンたちの声が聞こえてくるような気がします!

本は食べものと同じで、栄養だと思います。心の栄養です、心を育ててくれる。もしかりに、なにを食べたか、なにを読んだか、すべて忘れてしまったとしても、ちゃんと血となり肉となり骨となって、生きるための力を与えてくれる。ポンポン・シリーズも、子どもたちの成長の過程で、彼ら彼女らの心を育てる、豊かな栄養になってくれたらいいな、と思っています。
もしかしたら、子どもたちは大人よりもっと、日々、たいへんなことや悲しいこと、理不尽なことを感じて生きているかもしれない。大人みたいに気分転換に、旅に出るとか、買い物をするとか、好きなレストランで食事をしてお酒を飲むとか、そういった発散もできないわけですよね。でも、本を読んで、その作品の世界を心のよりどころにすることはできるでしょう? 

そして、大人になって、どうしようもなく、つらいことがあったとき、支えになり、乗り越える力をくれるのは、「幸せな記憶」だと思うんですよ。たとえ今は死にたくなっちゃうほどつらくても、この世界には、たしかに楽しいこと、嬉しいこと、面白いこと、素敵なこと、心あたたまることがあるって思い出せば、よーし、生きるぞ、と元気を取り戻せるんじゃないかな。きっとまた、いいことがあるに違いないから、もったいなくて死ねないよ、と。

子どもの頃の「幸せな記憶」って、家族と一緒に過ごしたり、友達と遊んだり、犬や猫などのペットと接したり、それこそ美味しいものを食べたり、いろいろあるとは思いますが、夢中になれる本を読むこともそのひとつ。子どもたちが喜んでくれる作品を書き続けて、彼ら彼女らが「幸せな記憶」を心の宝ものにするお手伝いができたらいいな、わくわくするような世界を、これからも子どもたちにプレゼントしたいな、と思っています。

───ありがとうございました!

おまけ☆ 野中さんに「好きなもの」を質問♪

Q.朝ごはん、昼ごはん、夜ごはん。どれが好き?

夜かなあ。夜だったらお酒が飲めるでしょう。仕事の合間に、気分転換に料理して、出来上がったら時間を問わず食べちゃうこともありますけど(笑)。

Q.おやつは好き?

大好きです。最近、はまっているのはパフェですね。『空飛ぶ おべんとうツアー』の中で、ジャッキーがパフェを食べている姿が出てくるシーンがあるのですが、「パフェ」という言葉を書いたときに、からだにびりっと電流が走りました! いま、わたしのブームは、餃子とパフェなんです。頑張ったあとには、ごほうびに食べにいきます。

Q.パーティは好き?

ホームパーティーっていいですよね。ここ数年は、ご近所さんからホームパーティーに呼んでいただいたりするので、キャリーバッグに猫を入れて、一緒に連れていきます。お料理も、お皿にラップをかけた状態で持っていっちゃう。まさに、スープの冷めない距離、なんですよ。楽しいですね。ポンポンみたいなワールドに突入しています。

Q.どんなレストランが好き?

美味しいものを気持ちよく食べられるところが好き。できればインテリアも可愛いと、いっそう嬉しい。居心地がよくて、お店の人たちがほんとうに食べたいもの、料理したいものがメニューに並んでいる。そんなレストランを見つけると、いいなあ、また来よう、と思います。

Q.幸せを感じるのはどんなとき?

餃子……(笑)いえ、美味しいものを食べているときです。猫が大好きなので、猫がとなりにいるだけで無条件に幸せ。それから、もちろん、本を読んでいるときも。いい作品だなあと思いながら、本を読み進めているときの幸福感たるや。自分の作品についても、なにもかも忘れて執筆に集中しているときは、ほんとうに幸福な時間です。書き続けてこられてよかったな、と思います。

Q.好きな童話や読み物は?

子どもの頃、佐藤さとるさんの「コロボックル・シリーズ」の大ファンでした。小学校の卒業文集に、わたしも童話作家になりたい、と書いたことを覚えています。寺村輝夫さんの「王さまシリーズ」も大好き。ポンポンのお話を書くことになったとき、「王さまシリーズみたいに、子どもたちがずっと読んでくれて、大人になってから、そういえば好きだったなあ、と思い出してもらえるようなものを書きたい」と熱く語った記憶があります(笑)。

二十代の頃、アメリカで何年か暮らしていたとき、英語を覚えるために、原書で子どもの本をたくさん読みました。『くまのプー』『クローディアの秘密』『チョコレート工場の秘密』『ベルベットのうさぎ』……いくつもの大好きな物語に出会いました。原書ならではの素晴らしさって、やっぱり、ありますよね。それに、当時の、わたしの英語の能力って、子どものために書かれた物語を読むのに、ちょうどいいレベルだったんですよ。だから、一冊、読み終えたときの達成感とか、ああ、子どものときって、こういう感じだったなあ、と振り返ることができました。

大人になってから、もう一度、子どもに戻ったような気持ちで児童書の数々を読んだことは、今、童話を書くときの大きな財産になっています。

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インタビュー・構成・文: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所靖子
(取材協力:こどもの本専門店 ブックハウスカフェ)

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野中柊(のなか・ひいらぎ)

  • 1964年生まれ。立教大学卒業後、在米中の1991年に「ヨモギ・アイス」で海燕新人文学賞を受賞して作家デビュー。小説に『ヨモギ・アイス』『小春日和』『ひな菊とペパーミント』『きみの歌が聞きたい』『プリズム』『マルシェ・アンジュール』『昼咲月見草』『公園通りのクロエ』『波止場にて』、エッセイ集に『きらめくジャンクフード』、童話や絵本に「パンダのポンポン」シリーズ(現在9巻まで出版)『ミロとチャチャのふわっふわっ』『ようこそぼくのおともだち』『赤い実かがやく』『ヤマネコとウミネコ』など著書多数。

作品紹介

パンダのポンポン(1) パンダのポンポン
作:野中 柊
絵:長崎 訓子
出版社:理論社
パンダのポンポン(2) 青空バーベキュー
作:野中 柊
絵:長崎 訓子
出版社:理論社
パンダのポンポン(4) アイスクリーム・タワー
作:野中 柊
絵:長崎 訓子
出版社:理論社
パンダのポンポン(5) クッキー・オーケストラ
作:野中 柊
絵:長崎 訓子
出版社:理論社
パンダのポンポン(7) サイクリング・ドーナツ
作:野中 柊
絵:長崎 訓子
出版社:理論社
パンダのポンポン(9) 空飛ぶ おべんとうツアー
作:野中 柊
絵:長崎 訓子
出版社:理論社
ポンポンクックブック
作:野中 柊
絵:長崎 訓子
出版社:理論社
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