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ぼくたちのこと、好きになってほしいんだ!『おかしになりたいピーマン』『おもちゃになりたいにんじん』岩神愛さんインタビュー

昨年出版され、好評の『おかしになりたいピーマン』(岩崎書店)につづき、このたび『おもちゃになりたいにんじん』(岩崎書店)が出版されました。
子どもに「きらい」と言われたピーマンやにんじんが、何とか好きになってもらおうと、色々なものに変身! カラフルな探し絵が魅力的です。
2冊はどのように生まれたのか、作者の岩神愛さんにインタビューしました。

ピーマンきらいな子が、絵本を読んだら食べてびっくり

───『おかしになりたいピーマン』表紙のピーマンの、訴えかけてくるような潤んだ目がインパクト抜群。しかも、ピーマンなのに“お菓子になりたい”ってどういうこと? と、気になって仕方ありません(笑)。どのようにしてこの絵本を思いついたのですか?

おかしになりたいピーマン
作・絵:岩神 愛
出版社:岩崎書店

きらわれ者のピーマン。 「なんでみんな、ぼくのこと嫌うの……。そうだ、おかしに変身しよう!」 そう考えたピーマンは、キャンディーにまぎれてみたりチョコレートをかぶってみたり。 でも、うまくいきません。

私がふだん絵や工作を教えている幼児教室に、どうしてもピーマンを食べられない3歳の男の子がいました。でもお母さんは食べてほしくて、毎回お弁当にピーマンを入れるんです。男の子は、ピーマンをこっそりポケットにすべりこませたり、落としたり、ランチョンマットの下に隠したり、「ほら、ピカピカだよ〜!」と、お弁当箱を空っぽに見せるために一所懸命で……。ピーマンはどんな気持ちだろう?と思ったんです。


岩神愛さん

───ピーマンの気持ちを想像したのですね。

ピーマンもかわいそうですが、その子の気持ちも……。親御さんは子どもに、栄養や発育のために苦手なものも食べてほしいし、先生たちもつくってもらったものは食べましょうねと言いますよね。プレッシャーで、子どもは気持ちの行き場がなかったのかなと思いました。

ピーマンを何とか好きになってもらえる方法はないかな、好きになるのが難しくても、せめて親しみをもってもらえたらなという思いで、10ページくらいの小さな絵本をつくりました。
読んであげると、最初は「なんだ、このピーマン。へんなの!」と笑っていたのですが、だんだん最後に「かわいそう」となって、その日ピーマンを食べたんです!

───えっ、お弁当のピーマンを食べたんですか!?

はい。ピーマンをいつも食べなかった子が……「食べるんだ!」とびっくりしました(笑)。すごく嬉しかったです。
それがきっかけになって、ちゃんと絵本にしたい、と思いました。本格的なダミーをつくり、以前からお付き合いのある編集者さんに持っていって、何度も修正しながらつくっていきました。

一番はじめに思いついたのが、キャンディに変身するシーンです。子どもの好きなものって何だろう。みんなお菓子は好きだよね、ピーマンがお菓子になったら食べるかな?と。
ピーマンが出てくる絵本は他にもたくさんあるので、ちょっと個性的な顔にしたいなと。気が弱くて情けなくて……という感じのピーマンの子なら、子どもも感情移入してくれるんじゃないかと思いました。


ラフを見せていただきました!最初に思いついたシーン。

───くるっ、んしょんしょ、と、ひとりで包み紙に入ろうとするしぐさがかわいい!


ラフの段階で、既にかなり細かく描き込まれています! 左は編集者の秋山さん。

編集者(秋山):この場面の表情や構図は、ほぼ最初のラフのまま、絵本になりましたね。

───制作にはどれくらいかかったのですか?

だいたい1年くらいでしょうか。何度もラフを描いて、探し絵のページを充実させるためにぎゅっと絵を詰め込んだり、ページごとに色の雰囲気を確認したりしながら、つくっていきました。


ラフは、実際の絵本よりひと回り小さいサイズ。スプーン・フォークセットの蓋の絵柄やコップの位置などは変わっていますが、全体的な構図はほぼそのまま。

───3歳の息子と一緒に読みました。ゆずるくんのランチョンマットやお弁当箱セットを「はやぶさ!」「ドクターイエローだよ!」と指をさしていました(笑)。


「ぼく ピーマンきらい、あっかんべー!」(『おかしになりたいピーマン』より)

子どもたちが喜んでくれたらいいなと思いながら、こまかいところまで描き込んだので、見つけてもらえて嬉しいです(笑)。


「ピーマンきらい! おかしはだいすき」とゆずるくんに言われて、「ぼくも おかしに なりたいなあ……」とピーマン。(『おかしになりたいピーマン』より)


「ぼくも おかしに なってみよう!」と、キャンディに変身。頬が赤くなりかわいい!(『おかしになりたいピーマン』より)

───絵本では、頬が赤く、さらにかわいくなりましたね。「膝小僧がかわいい」という感想も寄せられたとか。

3歳くらいの子は、体つきがまだ赤ちゃんぽいというか、肉付きがよくてむちむちしている子も多いですよね。膝小僧のまわりもこんな感じかなと(笑)。

───ケーキや和菓子と一体化するピーマン、とってもユニークでおもしろいです。
ピーマンは男の子で、2作目『おもちゃになりたいにんじん』のにんじんは女の子。2作目はいつ描こうと思ったのですか。

『おかしになりたいピーマン』を描いているとき、もう次の本のことを考えていました。幼児教室には、他の野菜、たとえばにんじんが嫌いな子もけっこういるんです。
もし、次ににんじんを主人公にするとしたら、どんな絵本にしようか。子どもが好きなものって、お菓子の他には何があるだろう。次はおもちゃかな。にんじんが嫌いな女の子が、どんなおはなしを読んだら、にんじんに親しみを感じられるようになるかなと。
『おかしになりたいピーマン』の本描きで色を塗る頃には、次作の絵のイメージが膨らんでいたと思います。

おもちゃになりたいにんじん
作:岩神 愛
出版社:岩崎書店

「にんじん、きらい。おもちゃがすき!」と聞いて、にんじんは大ショック。 好かれたい一心のにんじんは、おもちゃに変身することに! でも、いつもバレてしまうのでした。 前作の『おかしになりたいピーマン』のピーマンくんは、内気な男の子。 今作のにんじんは、ちょっと自信家でアイド気取りの(?)女の子。 そんなにんじんが気に入ってもらおうと奮闘するいじらしさに、キュンとしちゃいます!


りこちゃんに「だいっきらい」と言われて「……もう わたし、にんじん やめる。おもちゃになる!」(『おもちゃになりたいにんじん』より)


「おにんぎょうに へんしーん!」(『おもちゃになりたいにんじん』より)

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岩神愛(いわかみ・あい)

  • 1981年東京生まれ。都内の幼児教室で、絵画工作の講師をしている。日々子どもたちと触れあいながら制作を続けている。絵本に『青おにとふしぎな赤い糸』(PHP研究所)、『よなおしてんぐ 5にんぐみ てんぐるりん!』『おかしになりたいピーマン』『おもちゃになりたいにんじん』(以上3作、岩崎書店)がある。

作品紹介

おかしになりたいピーマン
作・絵:岩神 愛
出版社:岩崎書店
おもちゃになりたいにんじん
作:岩神 愛
出版社:岩崎書店
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