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読者参加型絵本制作プロジェクト「みんなでつくる!森のえほんプロジェクト」から生まれた、絵本『ふしぎな森のものがたり』(サニーサイドブックス)が完成しました!

プロジェクトを発案したのは、人気シリーズ「くまのがっこう」(作:あいはら ひろゆき、絵:あだちなみ、ブロンズ新社)でおなじみの絵本作家・あいはらひろゆきさん。イラストは、あいはらさんと絵本ユニット「たあ先生」として活動する、ちゅうがんじたかむさんが描きました。

音楽家の坂本龍一さんが代表を務める森林保全団体「more trees」も参加しており、絵本の売り上げに応じて植林などの森林保全活動へ寄付することで、読者が森林保全活動に貢献できる仕組みが、注目を集めています。発売にあたり、改めて作者のおふたりに制作を振り返っていただきました。

  • ふしぎな森のものがたり

    出版社からの内容紹介

    日本最大級の絵本サイト「絵本ナビ」×坂本龍が代表を務める「モア・トゥリーズ」×日本SDGs協会
    読者のアイデアがそのまま絵本になり、売れた分だけ植林のための寄付ができる。

    読むだけでSDG15「陸も豊かに」の活動となるSDGs絵本がついに登場。
    日本最大級の絵本サイト「絵本ナビ」と人気絵本作家あいはらひろゆきがコラボし、日本中の「絵本ナビ」読者に「不思議な木の実」のアイデアを募集して作った読者参加型絵本。
    集まった400以上のアイデアを人気投票し、選ばれた10案をそのまま採用、また応募者全員の名前が絵本に載るという画期的参加企画。また、この企画には坂本龍一氏が代表を務める森林保全団体「モア・トゥリーズ」も参加、25冊に1本の割合で植林のために寄付ができるという、読者が実際の植林活動に貢献できる画期的な企画となっていて、あらゆる方面から高い注目を浴びている絵本。

この書籍を作った人

あいはら ひろゆき

あいはら ひろゆき (あいはらひろゆき)

 1961年仙台市生まれ。長女の誕生をきっかけに絵本作家としてデビュー。 代表作は「くまのがっこう」シリーズ(ブロンズ新社)、『はっはっはくしょーん』(KADOKAWA)など。2020年に「サニーサイドブックス」を設立し、『トモダチ』、『笑顔が守った命』、『おばけのうんどうかい』などを出版。

この書籍を作った人

ちゅうがんじ たかむ

ちゅうがんじ たかむ (ちゅうがんじたかむ)

株式会社ベイシカ所属。
キャラクターデザイン会社「ベイシカ」にて絵本製作やキャラクターデザイン、プロモーションを行う。主な作品に「はっはっはくしょーん」シリーズ(KADOKAWA 2020年1月刊行開始)、『シャングリラ占星術』(あさ出版 2020年9月発刊)イラスト担当などがある。ちょっと人間みたいな雰囲気のある動物や、かわいくて憂鬱そうな女の子のイラストにファン多数。

「みんなでつくる!森のえほんプロジェクト」の詳細はこちら!

459案が集まったアイデアから選ばれた10案が絵本に!

───絵本ナビでこれまでアイデア募集、投票、アンケートなどが行われてきた「みんなでつくる!森のえほんプロジェクト」。459案から10案が選ばれ、ついに1冊の本『ふしぎな森のものがたり』になりました。あいはらさん、ちゅうがんじさん、それぞれ今の気持ちを教えてください。

あいはら:みなさんに応募していただいたアイデアから、「いろんな不思議な実がなる=多様性」というテーマにふさわしい絵本ができました。「枯れ山に、誰かが木を植えて育てると、いろんな実がなって、豊かな山になっていく」という、ストーリーはシンプルだけどアイデアが詰まった楽しい絵本になりましたね。

僕は作家デビューから約20年、物語絵本を中心に書いてきましたが、最近はもっとシンプルなストーリーで、いろんな方と一緒に本をつくることに興味が出てきて。「たあ先生」として『はっはっはくしょーん』(作:あいはら ひろゆき たあ先生、絵:ちゅうがんじたかむ、KADOKAWA)を幼稚園・保育園の子どもや先生たちを巻き込んで作ったら、想像以上にみなさんに支持されたんですね。だから今回は絵本ナビを通じて、絵本好きな人たちとつながりたかったのです。みなさんに「本づくりに参加したんだよ」と自慢に思ってもらえるものができたんじゃないかなと思います。

ちゅうがんじ:僕は、『はっはっはくしょーん』でご一緒したことがきっかけで、今回もプロジェクトを企画中にあいはらさんに声をかけてもらいました。一般の方が応募してくれたアイデアを絵にするのは、初めての経験でしたが、とてもおもしろかったです。

左があいはらさん、右がちゅうがんじさん。サニーサイドブックスのオフィスで、色校正を見ながらお話をしていただきました

───一般読者からのアイデアを絵本にしていくという試みでしたが、ちゅうがんじさんが絵を描くとき、迷ったところはありませんでしたか。

ちゅうがんじ:ほとんど迷わなかったです。「おにぎりさんが木を植えたら、梅干しや鮭など、美味しい具の実がなった」という応募案には、「どうやって描こう?」とちょっと考えましたけど……それぐらいかな。

完成した絵本では、かわいいおにぎりさんが登場!

あいはら:応募してくれたのが4歳の子だもの(笑)。人気投票でも5位で、上位に選ばれましたよね。

ちゅうがんじ:すごく子どもらしいアイデアで(笑)。最初はシャケを、丸ごと魚の鮭のまま描いていたんですが、「小さい子にはわからないかな」と考え直して、鮭の切り身の絵を描くことにしました。

プロジェクトの企画で、読者レビューを募集したときに発表されたちゅうがんじさんのゲラ(下書き)。たしかに、魚が木になっています

あいはら:僕の方では、幼い子どもたちにもわかるように、言葉をより具体的にしました。ゲラ(下書き)では、「なんと おにぎりのぐ の みが なったのです。」だけでしたが、最終的に「シャケに うめぼし めんたいこ」という感じですね。

当初はわざと同じフレーズを繰り返していたのですが、結局、具体的な描写を入れることで、同じフレーズは「うーん うーんの ぽーん!」だけになりました。

ちゅうがんじ:それにしても、食べ物が木を植えたら、食べ物の実がなるというのは、大人は真剣に考えても出てこないかも……(笑)。

───絵本ナビ社長・金柿が「植える側と、そこから生える実は関係性があるものだと思うけど、『え?コレ? なんで!?』と意外なところをついたアイデアが好きです」とコメントしていましたね。磯崎編集長もおにぎり案を「おいしそうでつい選んでしまいました」と(笑)。

あいはら:金柿さんと磯崎さんはアイデアのおもしろさで選んでくれましたが、僕は募集したアイデアを、実際にどんなふうに絵やストーリーにしたらいいのかを心配しながらだったので(笑)。「ナナホシテントウムシが木を植えたら、お星さまがなった」なんていうのは、絵にしてもかわいいし、素敵ですよね。

あと、「ぼくが木を植えたらママの実がなった」なんていうのも、ちっちゃい子ならではのアイデアで。

───応募者によると「『誰が木を植えたの?→ぼく! 何が出てきた?→ママ!』との2歳の子との会話から生まれた」とのことでしたが、投票の結果は6位と、けっこう人気。「いつでもどこでも、ずうっと一緒だよ。そんな気持ちになりました(NIさん/60代)」とか、「母は子どもがいないと母にはなれないという、哲学的な深みすら感じる(IYさん/30代)」という深いコメントもありました!

ちゅうがんじ:深いですね(笑)。逆に「子だくさんのお母さんが木を植えたら、木の実の中から小さいお母さんが出てきた」というのは大人のアイデアで。

あいはら:これもまた斬新(笑)。「誰か手伝ってくれたらうれしい!」という、お母さんらしい発想ですよね。

───投票では「子育てって大変!子どもと一緒に遊びたいけど、ご飯も作らなきゃ!そんなママを助けてくれる小さなお母さんの話はとっても続きが気になります(AIさん/30代)」「子だくさんだから、育てる助っ人が欲しかったのだろうなと、3人を育てる母の私は納得(AKさん/40代)」と、ママ目線でも支持されました。

あいはら:アイデアを出した方、投票した方、それぞれの意見が反映されてこの本はできています。アイデアが絵本に採用された方の名前は、各ページに応募されたときのニックネームを記載しました。「1歳の子が『ママがなった!』と言ったんだな」とか『「おにぎりの具」は4歳の子が思いついたんだな』と、すぐにわかると楽しいですよね。また、応募者全員のニックネームも折り返しに記載していますので、参加した方はぜひ自分の名前を探してみてください。

かわいいアイデアからユーモラスなものまで、バリエーション豊かな「ふしぎな実」

───ちゅうがんじさんが描いていて、楽しかった絵はどれですか。

ちゅうがんじ:特に楽しみながら描いたのは、やっぱり、最後の実のブランコですね。「ケンカしている姉妹が木を植えたら、2人で乗れるブランコの実がなった」というのが、すごくかわいいなと。

さっきまでのケンカはどこへやら、「ポーン」という言葉と一緒にブランコも笑顔も飛び出した!

あいはら:ケンカしているとき、ほっぺをひっぱりあっているのが痛そうだったね(笑)。

ちゅうがんじ:アンケートのときに「みなさんから何かご意見あるかな」と思ったけど、何もなかったのでそのままになりました(笑)。おはなしのはじまりはさびしい灰色の山ですが、後半になってやっと山に少しずつ色がついてくるんですよね。だから、緑の山でブランコをする女の子たちの絵は、描いていて幸せな気持ちになりました。

───心あたたまるアイデアですよね。あとはなんといっても、インパクトがあったのはパパの案ですね。「アイス好きなパパが、こっそり食べたアイスの棒を植えたら、アイスの実がなった」。

あいはら:ゆかいでふしぎなアイデアですよね。パパの顔が見てみたい(笑)。せっかくアイデアを出してくださったし、投票で選ばれたからこそ、そのまま、その通りに絵本にしましたよ。僕は、絵のアイスの棒が「『ハズレ』でいいのかな?」とは思ったんだけど。

ちゅうがんじ:僕もちょっとみなさんに意見をお聞きしたんですけど、絵本ナビのスタッフのみなさんも「ハズレがいい」って言うので…。

───きっとパパはアイスが好きで、「当たり」だったらもう1本食べられるのに……という残念なところがあるのかもしれないですよね。食べても食べても「ハズレ」ばかりだったのかもしれない(笑)。ちょっとユーモラスな感じですね。

あいはら:かわいい絵になるアイデアばかりじゃなく、ちょっとひねったような、おかしなものもあって、全体としてはいいバランスになったんじゃないかなと思っています。

絵本を買うことが植林活動につながる新しい試み

───あらためて企画の出発点について聞かせてください。読者参加型の企画を発案されたのはあいはらさんですか?

あいはら:そうです。最初に言ったように、『はっはっはくしょーん』を、ちゅうがんじさんと2人の絵本ユニット「たあ先生」として、全国の園に通って読み聞かせをしたり、アンケートをとったりして作ったんですね。

それは、これまで僕が「くまのがっこう」シリーズで制作してきたような絵本づくりの方法とは全く違って、新鮮だったんです。もっとこういうことをやってみたいなと思って、今度は、子どもや絵本が好きな一般の方に参加してもらえないだろうかと思いました。それが出発点です。

ちゅうがんじ:僕は、あいはらさんがそういうことを考えていたころに、よく一緒にお茶を飲んでいて、話を聞いていたんです。

あいはら:絵本好きの一般の方といっても、今子どもに関わっている若いお母さんやお父さんに参加してもらうには、やっぱりインターネットを使って、Webサイトで参加を募れたらいいなと。それで絵本ナビに声をかけさせてもらいました。

作っているうちに、せっかく多様性をテーマにしているんだから、何か社会に貢献できたらいいなと思って、本を買うことで木を植えられるような仕組みをつくりたい、と、森林保全団体「more trees」とお話したり。SGDs(持続可能な開発目標)を意識してもらえるような絵本になったらいいよね、とか。相談したり、応援してくれる人が増えるうちに、壮大なプロジェクトになっちゃいました(笑)。

───『ふしぎな森のものがたり』を買うと、坂本龍一さんが代表を務めている森林保全団体「more trees」が、実際に植林活動に役立ててくださるのですか?

あいはら:そうです。25.6冊売れれば、それが次世代への1本の木の植林活動につながります。仮に3000冊の本が売れたら、「more trees」を通じて120本弱の植林活動支援につながるわけですから。そういう仕組みを作れたのはよかったですね。

海外の森林資源はどんどん減っていますし、国内は森林の活用に課題があり、間伐した木を生かしつつ、森をいい状態に保とうとしている人たちがいる。日本SDGs協会のお墨付きもいただいて、社会貢献のメッセージのある本づくりに参加する、そんな意義を創り出せたのではないかと思います。

多様性は美しい!

───459案の応募があった中から、10の案が選ばれる過程ではいろんなことがあったそうですね。一次選考会では、あいはらさんと、絵本ナビの金柿代表や磯崎編集長が熱の入った意見を交わすこともありました。

あいはら:最初は4案を選ぶつもりだったんです。自分たちの案も合わせて、ひとつのストーリーにしようと思っていて。でも人気投票の上位4つを並べてもなかなかその4つだけを生かしきれないし、おもしろいアイディアが色々あって、正直なところ甲乙付けがたい。400案以上も応募していただいたのに、4案しか採用しないのももったいないなと思いました。この本の構成上、ぎりぎり採用できそうなのが10案だったから、じゃあ10個全部採用しちゃおうということになりました。

───選考会で印象に残ったことはありますか。

あいはら:選考のとき、磯崎さんが「こんなふうに家庭でおもしろいアイデア探しをしようと思って生活すると、日常が楽しくなりますね」「お風呂で、親子が一緒に考えたらいいよね」と言って、アイデアを出し合う日常風景が想像できましたよね。親子で「何かおもしろいアイデアない?」って考える時間が作れたらそれも素晴らしいと思う。

───子どもは「応募する」ことも大好きですものね。

あいはら:1歳の子、2歳の子がポロッと言っちゃったようなアイデアも、絵本ナビの人気投票で採用されて……(笑)。僕らだけでは作れない本が、参加型にしたことで生まれたのは興味深いことだし、作家としては改めて学ばされます。

ちゅうがんじ:僕は、「こんなアイデアのイメージなんだけど…」というものを、絵で具現化するという作業が大好きなので。おにぎりもアイスの棒も自由にやらせてもらいました。すごくヘンな絵だし、ゲラを公開してみなさんからアンケートをとりながら描くなんていうのも初めてでしたけど、「きっとこれでいいんだな」と思えて、コミュニケーションをとれるように感じたことが嬉しかったです。

───最終ページで、鳥や花や動物たちが飛び出す絵は、美しいですね。

あいはら:多様性は美しいものだから。

ちゅうがんじ:僕はもう、岡本太郎の「芸術は爆発だ」じゃないけど、あいはらさんの「思いっきり描いて!」という言葉だけを信じて描きました。表紙には最終ページが生かされて、デザイナーさんがタイトルのまわりのデザインや色味の調整をきれいにしてくださって、嬉しいです。

見た目も鮮やかな極彩色のカバー。どんな動物が描かれているのか、絵本を買って確かめよう!

───最後にこの本を手にとる読者のみなさんに、メッセージをお願いします。

ちゅうがんじ:みなさんがアイデアを出してくださって、僕も思いっきり絵を描かせてもらって。みんなで役割分担しながら楽しいことができました。実際に集まったアイデアは、僕たちからは出ないアイデアだし、その人じゃなきゃ出ないアイデアだったと思います。「その人じゃなきゃできないこと」を、どんなに小さいことでもやってくださったことに感謝しています。

みなさんの力でこの大きな企画が成り立っています。しかも、最終的に「木を植えること」にもつながる1本道ができました。これって、すごいことじゃないかなと。本を完成させることに力を貸してくれてありがとうございます!

あいはら:今回、アイデアはもちろん、投票したりレビューを書いてくださった人も含め、ここにしかない1冊の絵本作りにみんなで参加してくれました。僕たちも、一緒に作ることができて嬉しかったです。

今後、第2弾、3弾があるかどうかわからないけど、こういう絵本作りがこれから増えていってもいいと思います。もっともっとみんなでアイデア出して、おもしろいものを作っていけたらいいんじゃないかなと。アイデアが載らなかった方は残念だったと思います。でも巻末の名前に「参加した」という証が残る。そして、応募しそびれた方も、出来上がった本を買うことで、この壮大なプロジェクトの一員になれますから(笑)。

今は「ありがとう、できたよ!」とみなさんにお伝えしたいです。約25冊で1本の木が植えられて育つから「買ってね」と(笑)。みんなで本を楽しんで木を植えましょう!

───本当にたくさんの方のおかげで『ふしぎな森のものがたり』が出来上がりました。みなさんに手にとってもらえたら素敵ですね。あいはらひろゆきさん、ちゅうがんじたかむさん、ありがとうございました。

取材・文:大和田佳世(絵本ナビライター)
撮影:所 靖子(絵本ナビ)

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