●子どもの頃の夢は人形劇団員?
───ミロコさんといえば、『オオカミがとぶひ』(イーストプレス)で第18回日本絵本賞、大賞受賞という鮮烈なデビューを飾ったことが話題になっていますが、絵本作家になりたいと思ったのはいつぐらいからですか?
18歳くらいからです。その前は人形劇団員になりたくて、大学時代は大阪市内で子ども達に劇を見せる人形劇団に実際に入っていたことがありました。最初は台本担当で入ったんですが、何しろ人が少なくて、「チョウチョだけ飛ばして!」とか「フクロウ役できる?」とか言われているうちに、だんだん役をやらされるようになって…(笑)。次第に、物語を書くことを続けていきたいと思うようになっていきました。
───ミロコさんというと、絵の印象が強く残るのですが、元々はおはなしを書きたくて、絵本作家を目指されたんですね。
そうなんです。絵は自分ではかけへんと思って、最初は知り合いに頼んだりしていたんです。でも、なかなか思い通りの絵を描いてもらえなくて、注文を付けすぎてケンカ別れみたいになることもありました。あるとき、こんなに色々注文をつけるなら、自分でも描けるんじゃないかと思って描いてみたら、自分のおはなしと絵が一致した作品が描けたので、これや!と思って今に至ります。
───絵本を描くときに特に気をつけているというか、テーマにしていることはありますか?
絵を描くときはなにかモチーフを決めて描くことが多いですね。今年は「赤い月」をテーマに絵を描いています。おはなしを考えるときは、頭の中は常に自由に発想できるようにします。折角思い浮かんだおはなしを「描けないから…」という理由で断念しないよう、最近はいろんなものを描けるよう練習しています。
───今回の絵本でも新しく挑戦した部分はありますか?
●子どもの頃は、父が絵本を読んでくれました。
───子どもの頃に絵本を読んでもらった思い出はありますか?
私は弟と2人姉弟なんですが、うちではもっぱら父親が絵本担当だったんです。寝る前には毎晩1冊ずつ絵本を読んでもらいましたね。子どもって、何度も読んでとせがむので、なかなか終わらないんですよね(笑)。
───よく読んでもらった絵本はどんなものがありますか?
『ぼちぼちいこか』(作:マイク・セイラー 絵:ロバート・グロスマン 訳:今江 祥智 出版社:偕成社)と『じごくのそうべえ』(作・絵:田島 征彦 出版社:童心社)は何度も読んでもらった記憶があります。おならのところとかでゲラゲラ笑って、大阪弁のしっくりくる感じが大好きでした。あと、タイトルを忘れてしまったのですが、科学系の絵本で魔法使いが出てきて科学実験をする絵本も大好きでした。「ヤレホンダラピー」という魔法使いの呪文の部分は今でも鮮明に覚えています。
───ミロコさんは定期的にワークショップを開いて、子ども達と接する機会を増やしていますよね。
人形劇団を辞めて本格的に絵を描くようになったとき、個展などで大人の人たちから褒められることにだんだん違和感を感じるようになってきたんです。そんなとき、子ども相手にワークショップをする機会がありました。子どもって普通に無視とかしてくるんですよ(笑)。そうすると私も変に気を遣わなくていいというか、わがままになれる感じがして、とても気持ちが軽くなったんです。サイン会で絵を描いても、子どもは「ゾウ描いて!」と平気でリクエストしてくるし、「僕、オオカミにひげ描いてほしくないんだよね」とクレームをつけてくる(笑)。そんなところが面白いなと思って、今では定期的に子どもと触れ合っていないと、モヤモヤしますね。
───『ぼくの ふとんは うみでできている』はどのように楽しんでほしいですか?
この絵本で描きたかったことは、子どもの頃から私が感じていた夜の怖さではなくて、夢が現実と繋がっている不思議というか面白さなんです。絵本ではいつも、物語に書いてあることだけで完結させずに、その先を想像してほしいと思って描いていますね。次の日のぼくの見た夢はなんだろう…とか、今日私の見る夢は、現実の何とつながっているんだろう…とか。その思いはデビュー作『オオカミがとぶひ』から変わらず持っていますね。自分の想像の広がりを楽しんで遊んでくれたら嬉しいです。
───ありがとうございました。今夜から見る夢をいろいろ想像してみたいと思います。