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「すこやかな心をはぐくむ絵本」シリーズ完結記念 絵本作家インタビュー【くすのきしげのりさんと12名の絵本作家たち】廣済堂あかつき 2016/07/20
大きなつぶらな目が印象的なモモンガくん。鮮やかな若葉と赤い風船の対比も美しい『モモンガくんとおともだち』は、引っ込みじあんな子の背中をそっと押す、やさしさにあふれた絵本です。
作者のくすのきしげのりさんがインタビュアーになって、絵を描かれた高知在住の狩野富貴子さんにインタビュー!
■ 「勇気」と「やさしさ」について
くすのき:友達になりたい、一緒に遊びたい。ずっとそう思っていたモモンガくんは、お父さんやお母さんに背中を押されて、勇気をふるって飛び出しました。狩野さんにとって「あのとき、よく、一歩を踏み出した」と思えるチャレンジには、どのようなものがありましたか。
狩野:どんなに考えても子どもの頃に、一歩をふみだした記憶はありません。勇気のいることには気後れして、そのうえズボラな私はソッポを向いていたのでしょうか。
44歳のおばさんになって必要にかられ、そして子どもの本の絵を描く仕事にあこがれて、描いた絵を背負い、東京の出版社まわりをしたことが、私にとって勇気をふるって飛び出した一生に一度の一歩かもしれません。
くすのき:そのおかげで、こんなにかわいいモモンガくんを描いていただけたのだから、読者の皆さんにとっても、そしてぼくにとってもありがたい一歩ですね。
くすのき:モモンガくんの表情がとても豊かなのですが、モモンガくんを書くときにどんなことを考えて描かれましたか。また、この本の中で、狩野さんの、おすすめの場面、お気に入りの絵があったら教えてください。
狩野:モモンガくんだけでなく、人にはみんな似たような体験はあると思います。
絵を描く時、気持ちはモモンガくんになったり、お母さんになったり、年齢のせいか,さらにおばあさんになったりしながら楽しんで描きました。このお話のやさしさが丸ごと大好きです。みんなやさしい!
くすのき:ありがとうございます。この絵本の動物たちの愛らしさ、そして本質的なやさしさを絵で表現していただけたこと、本当にうれしいです。
狩野:私の気に入っているシーンは、モモンガくんが巣穴から遊んでいる動物たちをのぞいているところです。きっと、モモンガくんは下を眺めては、ドキドキしたり困ったりしているのでしょう。子どもの頃も、大人になってからも、すぐドキドキしてとまどってしまう私には、とても共感する場面です。
くすのき:モモンガくんの気持ちが絵からよく伝わるのは、狩野さんの小さかった頃の姿や心の動きが投影されているからなのですね。
■ 狩野さんの子どもの頃の思い出やエピソード
くすのき:小さかったころ、森などの自然の中でどんなことをして遊んでいましたか? 思い出やエピソードがあったら教えてください。
狩野:親からの禁止事項は多々ありましたが、外に出るとどこかへ消えました。大小さまざまな年齢の子どもたちがつれだって、滝壺で泳いだり、深い山に山菜取りに入り迷ったり……。半泣きで山をさまよい、夕方やっと道が見つかり何食わぬ顔で家に帰ったことなど思い出します。
よく事故を起こさなかったなあ……と何十年経った今頃、胸をなでおろします。
くすのき:わたしの住む徳島と同じく、高知では山も川も美しいですから、子どもたちの天国だったのでしょう。
■ 絵本制作のアイデアやチャレンジしたいこと
くすのき:絵本のアイデアが生まれるのは、どんなところからですか? いつ、どんなときでしょう?
狩野:作家さんのお話を心の中でくり返します。そして、言葉そのもののシーンだったり、言葉と言葉の間のシーンが見えたりと、いろいろです。
くすのき:画家の方は頭の中に見えているものを、こんなふうに絵で表現できるのが、すごいなあといつも思います。
主人公に描いてみたいもの(人)はありますか? その理由も教えてください。
狩野:動物と子どものふれあいを描いてみたいです。子育ての頃、わけあり猫をむすめたちがつれてきて、いつも複数の猫と暮らしました。その中で私が教えられない大切なことを、むすめたちは学び、助けられました。私も猫にもらったまぶしい信頼の数々を忘れることができません。洋服を着せて、子どものように愛する現在のペットブームとは、かなり違っていますが……。
くすのき:わたしもずーっと猫を飼っていました。狩野さんの動物の絵が、とても生き生きしているのは、そんな風に暮らしていらしたからなのですね。
これから挑戦したいことはありますか? お仕事でも、それ以外でも。
狩野:いつもよい仕事をしたいと願っています。
くすのき:ほんとうに、そうですね。プロとして同感です。
狩野さん、たくさんお話しいただいてありがとうございました!
───最後に狩野富貴子さんのひみつを手書きコメントで大公開!
狩野富貴子さん おすすめの本
1945年高知県生まれ。広告関係の仕事を経て、絵本や読み物の挿絵の世界に入る。絵本に『おばあちゃんはかぐやひめ』(松田もとこ作 ポプラ社)、『いっぱいのおめでとう』(あまんきみこ作 あかね書房)、『ふくびき』(くすのきしげのり作 小学館)、『モモンガくんとおともだち』(くすのきしげのり作 廣済堂あかつき)など多数。
1961年徳島県生まれ。鳴門市在住。小学校教諭、鳴門市立図書館副館長などを経て、現在は、児童文学を中心とする創作活動と講演活動を続けている。絵本『おこだでませんように』(小学館)が、2009年に全国青少年読書感想文コンクール課題図書に、2011年にはIBBY(国際児童図書評議会)障害児図書資料センターが発行する推薦本リストに選出される。同作品で第2回JBBY賞バリアフリー部門受賞。また、『ふくびき』(小学館)、『ともだちやもんな,ぼくら』(えほんの杜)と共に第3回ようちえん絵本大賞を受賞する。その他の絵本に『もぐらのサンディ』シリーズ@〜C(岩崎書店)、『あたたかい木』(佼成出版社)、『えんまのはいしゃ』(偕成社)、『みずいろのマフラー』(童心社)、『ええところ』(学研)、『メロディ』(ヤマハミュージックメディア)など多くの作品がある。
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