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連載

『ぐりとぐら』の作者が贈る、ママたちへのメッセージ  『ママ、もっと自信をもって』出版記念連載

日経BP

2016/08/25

【連載】第2回 未来屋書店 川向真由子さんインタビュー

【連載】第2回 未来屋書店 川向真由子さんインタビュー

今回お話を伺うのは、未来屋書店幕張新都心店、コンシェルジュの川向真由子さん。お客様に本をオススメするコンシェルジュの立場から見た『ママ、もっと自信をもって』の魅力。さらに、実は似ているところが多い? 中川李枝子さんとの共通点などについて、お話ししていただきました。
●お子さんがいる方もいない方も、楽しめるエピソード満載です!
―― 『ママ、もっと自信をもって』というタイトルを見たとき、作者が『ぐりとぐら』の中川季枝子さんだと知ったとき、本を読む前にどのような印象をお持ちでしたか?
初めてこの本のタイトルを見たとき「おや」と何かがひっかかり、お店の中で足を止めたことを覚えています。
私はまだ「ママ」じゃないというのに、シンプルで気さくな口調で語りかけてくるその本の声に呼ばれ、気が付いたら手に取ってしまっていました(笑)。
今思えば見覚えのある絵と名前にも、無意識に反応していたのかもしれませんね。

中川季枝子さんの名前は、ずーっと前から存じ上げていました。それこそ、私が小さな子どもだった頃から。
私の母は元保育士で、たくさんの絵本を私に読んでくれていたのですが、その中に中川さんの作品ももちろんありました。

母は絵本を読むとき、必ず作者の名前まで読んでいました。たとえそれが何度も読んでいる本だったとしても。だから私は小さいころから、中川さんの名前を何度も何度も聞いていて耳で、リズムですっかり覚えてしまっていたのです。(だって『ぐりとぐら』を一回だけ読んで満足できる子どもはそういないでしょう?)

しかし手に取ってパラパラと中身を確認したものの、私はすぐに本を元の場所に戻してしまいました。
「ママ」でも「保育」に携わる立場でもない自分には関係のない本だと、そのときは決めつけてしまっていたのです。(反省!)
―― 『ママ、もっと自信をもって』を読み終わったときの感想をお聞かせください。
実際に読んでみて、あのとき自分には関係ないだろうと決めつけて本を戻してしまったことをとても後悔しました。そのまま読まないままにならなくて、本当によかったと思います。
もっと「育児とはなんぞや」といったようなことが書いてある育児書かと思いきや、いい意味で肩の力の抜けたエッセイ集のようなもので、押しつけがましくないところが私にはとても好ましかったです。

ママたちとのQ&Aの合間に、中川さんの半生も垣間見えて、「ママ」じゃなくても絶対楽しい!
「ママ」や「保育」に携わる立場の人にはもちろんですが、私のようにこれから「ママ」になるかもしれない人や絵本が好きな人にも、ぜひともおすすめしたい本です。
(あと、絵本や童話を書きたいと思っている人にもおすすめ!)
特に「中川さんの作品を読んで育った」という人は、大好きな作品の誕生秘話も聞けるのでぜひ一度手に取って見てください。

文字も大きめで余白も贅沢に使っているので、とても読みやすい本です。その上懐かしい挿絵もたくさん入っているし、短い章ごとに話も変わるので、本を読むのが苦手な人でも最後まで気を楽にして読めるのではないでしょうか。
●本好き? 行動力抜群? 中川さんとの共通点がいっぱい!
―― 『ママ、もっと自信をもって』に登場するエピソードの中で、特に好きなエピソードを教えてください。
私が好きなのは、中川季枝子さんが「みどり保育園」に就職するエピソードです。だって、自分を見ているみたいでなんだかおかしくなるから(笑)。
同級生がみんな、給料や条件もよく、優秀な先輩もいる公立保育園を希望しているのに、ひとり自分の理想の保育ができる環境を求めて自分の決めた道を進んでいく中川さん。
そんな中川さんに自分を重ねるのはなんだか恐れ多いですが、その姿は私が今の仕事を選んだときに似ていました。
同じ大学の人たちはみんな無難に就職先を決めていたけれど、私はどうしても絵本に携わって生きていくことを諦められず、あがいていました。

そんな私の前についに現れた、二つの選択肢。
一つ目は、老舗の絵本専門店のスタッフ。偶然空きが出たタイミングで募集がかかっていました。こちらは給料や条件がよく、自分の将来の保身のためならこちらを選ぶのが無難。長くやっている絵本専門店だし、優秀なベテランの先輩たちにきっと多くのことを教えてもらえるでしょう。

二つ目は、新しくできる絵本や玩具を中心に扱う書店の「コンシェルジュ」という仕事。こちらは、一つ目よりは条件がよくない。それに新しいお店の新しい試みなので、きっとたくさん苦労もすることでしょう。先輩もいないから誰も教えてくれないし、自分たちで頑張るしかない。
それでも私は、その募集を見たその日のうちに二つ目のお店に応募の電話をかけていました。

理由は簡単。こちらのお店のほうが自分の力を発揮できると思ったからです。
新しいお店ならみんなが初心者。小娘の私にだって、きっとチャンスがあると思いました。一方、一つ目のお店には優秀な先輩たちがたくさんいることでしょう。それだと私の出る幕はないし、やりたいことができるようになるのは何年先のことだろうと思ったのです。

ほら、新人なのに「園長が無理なら、主任で結構!」と自信満々な中川さんと、小娘のくせに「自分の力を発揮したい!」と条件のよいほうを選ばなかった私。ちょっと似ていると思いませんか?(笑)
―― 中川さんの幼少期からのエピソードの中で、ご自身と重なる部分がありますか?
私と中川さんの子どもの頃の共通点と言えば、生きていくうえで大切なことを本からたくさん教えてもらったというところだと思います。
私も様々な登場人物たちの人生を読書を通して疑似体験し、自分のことのように吸収して成長しました。
心の柔らかい子どもの時期に、たくさんの良質な本に出会わせてくれた両親にとても感謝しています。

それから、物語に出てくる見たこともない料理を「おいしそう」と想像しながら読んでいたところも一緒(笑)。 私は童心社から出ていた『こぶたのるーた』という絵本に出てくるミルクパンを「おいしそう。食べてみたいな。」と思いながらいつも読んでいました。
もちろん言わずもがな、『ぐりとぐら』のカステラにも夢中でした! 特に『ぐりとぐらのおきゃくさま』に出てくるクリスマスケーキがおいしそうで、食べてみたくて仕方なかったことが強く印象に残っています。(もちろん、今でも食べたい!)
―― 中川さんのような子どもがいたら、友だちになっていたと思いますか?
また、どんなことをして遊んでみたいと思いますか?
本好き同士、きっと自然と友達になっていたのではないかと思います。そうだったら、嬉しい。
中川さんが実際にしていた本の回し読みや、おすすめ本を交換し合うのもきっと楽しいと思うけれど、私がしてみたいのは「おはなししりとり交換日記」。
前の人が考えたおはなしの続きを考えて書いて、交換日記のように続けていく遊びのことです。一度に書くのは、少しずつで構いません。それでも長く続けていけば、立派な自分たちだけの物語の出来上がりです。

私は昔から本を読むことも、自分で物語を考えることも好きな子どもでした。私のような子はあまり周りにはいなくて実際にこの遊びをすることは叶わなかったのだけれど、中川さんとだったらきっと素敵な物語を作ることができたでしょう。
中川さんと一緒に物語を作るなんてとても贅沢ですが、子ども同士でなら許されるのではないかと思いました(笑)。
―― 中川さんの作品の中で、ご自身の思い入れ深い作品がありましたら、教えてください。
大好きな作品はいくつもあるのですが、その中から今回一つ選ぶとしたら『いやいやえん』でしょうか。この本は、まず私の母にとって特別な一冊でした。
母も小さい頃にこの本に出会いました。そうして、あまりにもこの本に出てくる「ちゅーりっぷ保育園」が自分の通っている保育園にそっくりで驚いたのだそうです。
母の通う保育園にも、はるのはるこ先生に似ている小さな先生となつのなつこ先生に似ている大きな先生がいて、その二人があまりにお話の中に出てくる先生たちにそっくりだったため、すっかり「この話はうちの保育園の話だ!」と思い込んでしまったとか。
うちの保育園がどうして本になっているのだろう?と当時本気で不思議だったそうですよ(笑)。

私は、母にこの本を読んでもらうことが好きでした。 今思うと、母のこの本を好きな気持ちや楽しんで読んでいる気持ちが、子どもの私にも伝わっていたのかもしれません。
ちなみに中でも私の一番好きなお話は「くじらとり」です。 つみきの船で海に出るあのわくわく感! 旅の準備をしているシーンが特にお気に入りで、船に詰め込むものすべてがとんでもなく素晴らしいものに見えました。
空想で遊ぶことが好きで大得意だった私は、読むたびに一緒に船に乗り込んで大海原でくじらを探していました。
大人になった今でも、読み返せばすぐ船に乗り込めることは私のささやかな誇りです。
―― 書店員の立場から見て、特に人気の本(またはオススメ本)とその理由を挙げてください。
人気なのはやはり『ぐりとぐら』。子どもたちの中で不動の人気で、もう殿堂入りですよね。
うちのお店では平日の毎週水曜日に「おはなしえん」という読み聞かせイベントを行っているのですが、そこで読んだときの子どもたちの食いつきがすごい。
「この本、しってる!」「もってる!」「ようちえんでよんだ〜」と言いながらも、こちらが読みはじめるとどの子も楽しそうに聞いています。
そしてカステラのシーンでは、何度でも歓声をあげてくれる(笑)。
いつまでも色あせない、子どもたちに愛され続ける絵本ですよね。

おすすめなのは、同じ『ぐりとぐら』の「なぞなぞえほん」シリーズ。子どもに楽しいなぞなぞがたくさん出てきます。小さいサイズの絵本で軽いので、持ち歩くのにピッタリ。おでかけのときに一冊バッグに忍ばせておけば、子どもが退屈して落ち着かなくなってきたときに大活躍してくれることでしょう。
三冊セットで箱に入っているものもあって、ギフトにもおすすめです。
―― ご自身、または身の回りのママに、中川さんの子育てメソッドを伝えるとしたら、特にどの回答を紹介したいですか? 理由もお聞かせください。
私の仕事は、うちのお店にくるお客様と一緒に絵本を選ぶことです。他にもいろいろあるけれど、これが私の一番大事なお仕事。
絵本を選びに来るお客様の中には、やはり子育て中のお母さんがとても多いのですが、よくこんな質問をされていきます。
「子どもを本好きにするには、どうしたらいいですか?」 「キャラクターものばかりに興味をもって……」 「もっと文字の多い本も読ませたいのですが」 「子どもが絵本に見向きもしてくれないんです」
みなさん、自分の子どものことを真剣に考えている人ばかり。だからこそ、「よい本を与えたい」「将来のためにも本好きになってほしい」と思うのでしょう。

 そんなとき、私はこうアドバイスさせて頂いています。
「お母さんの好きな本を、楽しんで読んでください」と。

 中川さんも、作中でこんなことを仰っています。
「読むのは子どもが読んでほしい本よりも、私の好きな本が優先」(p.132)、「絵本を一緒に読むことの最大の効用はスキンシップ。(中略)お母さん(お父さん)自身が楽しみながら、子どもと一緒に絵本を見て読む、それでいい」(p.189)

まさに、私も同意見! この二つの章を読んで、中川さんのことがもっと好きになりました。

子どもはお母さん(お父さん)の気持ちにとても敏感。気持ちはすぐに伝染します。だからこそ、自分自身が好きだと思う本を選んでほしいのです。
この話題についてはもっと熱く語りたいのですが、私の語りたいことは作中で中川さんがすべてお話してくださっているので、続きが知りたい人はぜひ本を読んでみてください。
―― この作品を書店のPOP風にオススメするとしたら? キャッチコピーを教えてください!
だいじょうぶ、だいじょうぶ。おかあさん、だーいすき!
―― ありがとうございました!
●未来屋書店幕張新都心
今回お話を伺った、川向さんが勤める未来屋書店幕張新都心は、めばえときずなを育む場所。
日本最大級のエンターテインメント型児童書売場「みらいやのもり」があり、お子さまとのコミュニケーションを楽しくする文具も取り揃え、お子さまと一緒に来店する3世代が共に過ごせる空間、共に楽しめるブックライフストアです。


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