昔、ある村に、てるてるぼうずを作ってばかりいる娘がいました。
庄屋の娘で、庄屋はこの娘をとてもかわいがっていました。
娘は屋敷のそこらじゅうにてるてるぼうずをつるし「あした てんきに なあれ」と歌います。
空は晴れて太陽がじりじりと照りつけ、村の田んぼは水がなくてからからになってきました。
村に水をわけてくださいと、庄屋がお城の殿様にお願いに行きますが、わけてもらえません。
日照りに追いつめられた村人は怒り、屋敷を取り囲んで「てるてるぼうずをすぐにつぶせ」と迫ります。
「てるてるぼうずをつぶさないのなら、しょうやもむすめも、ころしてしまうぞ」「火をつけるぞ」と。
娘は村人の前に飛び出し「てるてるぼうずをつぶしてはいけません」と言いますが、村人たちに縄でぐるぐる巻きにされて一本杉に縛られます。
やがて夜空には星が見えなくなり、黒雲が広がり、大雨がふりだしました――。
昔ばなし研究家の宇津木秀甫さんが、沖縄の型染めを長年制作されてきた長尾紀壽さんとともに作り上げた創作民話絵本。
緑色の着物姿の娘の愛らしさ、りんとした力強さが描かれます。
夕焼けの赤や、「てるてるぼうずをつぶせ」と迫る村人のオレンジ色のたいまつの火……。
黒を基調とする絵のなかで、緑、赤、オレンジなどが対照的であざやかです。
「てるてるぼうず、あしたてんきになあれ」。
子どもなら誰でも一度は願ったことがあるてるてるぼうずへの祈り。
ひたむきなむすめの強さ、追いつめられた人々のこわさや、日照りや大雨の恐ろしさも伝わってくる絵本。
不思議な魅力の絵から、南方の風土が香るような絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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