現場に行かずとも話を聞いただけで謎を解いてしまう「安楽椅子探偵」。そんな魅力的な名探偵達の活躍ぶりを収めた、珠玉の作品集です。ベン・ヘクト「十五人の殺人者たち」、ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」、フィリス・ベントリイ「登場人物を探す作者」、天藤真「多すぎる証人」の、4編を収録。
これを書いている私は、探偵小説やミステリーなどは苦手です。
登場人物が3人以上いると、もう誰が誰だか、どういう関係なのか、覚えておけなくなって、更に込み入った事件が発生したりした日には、完全にお手上げです。
そのため、普段は長編ミステリーはまず読みません。
しかし、この短編集は、そんなミステリー音痴にも読みやすくできています。
4つの話が入っていますが、どれもタイプが違う、個性的な物語で、
最期まで興味をもって読み切ることができました。
外国の話が3つ、日本の話が1つ。
外国の話は、行ったことがない海外の、分化や人の感じ方・考え方の違いを楽しめました。
「登場人物を探す作者」(作・フィリス・ベントリイ)のお話が、一番、印象に残りました。この話は、他の作品と違って、2つの話が同時に進行して、最後に思いがけない結末を迎えるという話の作りがお洒落でした。
出てくる人物のセリフやしぐさなどが、昔の外国の、今とは違った社会のありかたや物の考え方を空想させてくれて、タイムトリップしたような気分です。
一番最後に収められた日本人作家の作品「多すぎる証人」(作・天藤真)は、1990年代を思わせる実にリアルな作品。生活感があり、人物が本当に目の前に生きて動いているような躍動感が感じられました。重度の脳性麻痺の少年が、事件の解決の助けとなるという設定も、斬新です。
推理もの、ミステリーものを読んでみたいけど、ハードルが高いと感じている人なら、年齢を問わずおススメしたい一冊です。(小さい子どもには、ちょっと難しいかな)
文章の中に難しめの言葉があったり、言い回しが時代が買っていたり、文学的な表現が多いので、読解力が鍛えられます。ちょっとした読書のトレーニングになると思うのでので、挑戦してみてはいかがでしょうか? (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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