子どもを持つ母親の心情を描いた絵本は数多くありますが、中でもこの絵本が私の気持ちにぴったりでした。
「ぼくにげちゃうよ」「おかあさんはおいかけますよ」
全編、このやりとりなのですが、その追いかけかたが決して押し付けがましくなく、ユーモラスで、心がほっとあたたかくなります。
今までは母親べったりだった息子も、いよいよ来春は幼稚園。
「ようちえんバスにのって、バイバイするよ、なかないよ。
おかあさんは、おるすばんしていなさい」
(なぜか私に似て命令口調)
と、鼻の穴をふくらませて言うもんだから、思わず
「いやだ。寂しいからお母さんもついてっちゃおうかな」
と言うと、
「だめ。ここはおかあさんようちえんではありません。
おかあさん、きんし!って、せんせいにおこられちゃうよ」
と、一蹴されてしまいました。
今までぎゅっと握り締めていた砂が、指の間からさらさらと零れ落ちるように、母親から「逃げて」成長してゆく息子。
それを、そっと気づかれないように後ろから見守りつつ、自由に走り回る息子の邪魔をしないように、大きく両腕を広げて追いかけてゆくのでしょうね。これからも。