病気の妹を思いやるお兄さんのお話です。
一晩病気の妹についているお兄さん。
病気の人と話をするのは難しい。
むなしく聞こえるし、嘘っぽく聞こえるし、間違っているような感じさえする…。
二人はおしゃべりをやめて、楽しかったことを思い出すことにする。
モミの木のてっぺんにいるカラス。
不意に妹がバイオリンを弾いてっていう。
昔父が買ってきた黒いバイオリン。
自分では弾けないっていうと、それでもいいっていう。
ひどい音で「悲しみとさびしさ」って即興曲を弾いたら、死神が来てしまった。
死神がもっと弾いてっていうから、だんだん楽しいことを思い出して、曲が明るくなったら、死神はいい気持になって夜の明けるのも忘れて眠ってしまった。
妹は元気になったし、死神は姿を消した。
モミの木のカラスも飛び去って行ってしまった。
お兄さんの心象風景のような物語です。
とても繊細な優しさを感じました。