小学生の頃に読みました。
そして読書感想文にも書いた、宮沢賢治の作品の中で一番心に残っているお話です。
よだかは醜い鳥です。だからみんなに嫌われていました。
でも、よだかは優しい鳥です。今までに一度だって悪い事なんてした事はありません。
ひっそりと真面目に寂しく生きるよだかを、誰に蔑む権利があるのでしょう…
生きていることにすら罪悪感を感じる、よだかはもう…そこまできていたのです
そしてある日の夕方、とうとう鷹が「改名しろ」と、よだかの元にやって来ました。
それはよだかの存在をも否定する、あまりにも残酷な行為でした。
よだかはそんな事をするくらいなら死んだ方がましだ、今すぐ殺してください、と言いました
小学生の私には、報われないよだかが可哀想で可哀想で、あんまりだと思っていました。
そして、よだかのために自分がなにかできないか…と思っていました。
弟のかわせみや蜂雀の愛だけでは、よだかの悲しみや苦しみは救えなかった
よだかにはもう、どこにも居場所がなかった
よだかが空へ昇る時、空を切る稲妻のように力強く、よだかが落ちる時、 それはそれは美しい流れ星のような光だったんでしょう…
そしてよだかは、夜空を照らす星になった。
目が覚めると、すぐとなりにはカシオピア座がいて、そして天の川の青じろい光がすぐ後ろになっていました。
星になることを望んだのはよだかですが、本当はこの世に生きていたかっただろうと、そう思っていてほしいというのは、私のわがままですね…
小学生の頃はこの結末が良いのか悪いのか半信半疑だったけど、今は心から思います。
よだかは報われたのだと。
…やっと居場所を見つけたんですね。
よだかの星が一際輝きながら燃えているのは、よだかが誰よりも、美しい心を持っているから
そして野原や林の鳥たちは、あんなに忌み嫌っていたよだかの星を毎晩見上げては、心を休めるのでしょう
体は焼けてなくなっても、よだかの心だけはいつまでも美しく燃え続けています…
このお話の中で私が一番好きな場面は、よだかが甲虫を噛まずに、呑み込むところです。
自分が食べる虫の命をも慈しむ、よだかの優しさと苦しみが、痛いほど伝わってきます。
私は自分に厳しく周りに優しくできる者が、本当に強いと思うのです。
よだかはとても強い鳥だったのだと、大人になってわかりました。
そして、よだかの事がもっともっと大好きになりました。