この絵本はもともと8分間の短編映画からシーンを切り取られて再構成されています。
【内容】「それじゃな。」ぽつりと言い残してボートを漕ぎ出した父。見送る娘。やがて娘は大きくなり恋に落ち、子供が生まれ、母親としての役目を終えまた一人となる。だがどんなに思いを寄せても父が二度と帰ることは無かった・・・。
【絵】モノクロにセピア調。少女の成長と共に伸びゆく木々。どこまでもシンプル。照らされて伸びる影が哀愁を誘います。
この絵本は多くを述べる必要ありません。きっと皆も心のどこかで分かっている、そんな作品です。当たり前のことを描くのは逆に難しいと思うのですが、この作品は飾ることなく見事に表現されています。
内田也哉子さんの和訳もつつましく素敵ですが、絵だけを眺めて読み進める方が心にぐっときました。
5年後、10年後、30年後。年を重ねるに連れて受ける印象も変わり、また変わらないものがある。双方を感じるだろうという印象を受けました。