1985年8月12日に起こった日航ジャンボ機墜落事故から2020年で35年になりました。
520人という多くの尊い命が犠牲となったこの事故で、この絵本の作者である美谷島邦子さんも当時9歳だった次男の健ちゃんを亡くしています。
月日が経つとともにどんなに大きな事故であっても風化していきます。
まして35年という長い時間は、あの事故を知らない人が増えていることでもあります。
この絵本を手にするお父さんもお母さんも、もしかしたらあの事故を知らない世代かもしれません。
絵本の中には飛行機の残骸も描かれていないので、飛行機事故の犠牲になった幼い命とそのお母さんのお話だとはわからないかもしれません。
けれど、どうか忘れないでください。
あの日、多くの命とさようならをしたもっと多くの人たちがいたことを。
そして、それはあの事故だけではありません。
2011年春に起こった東日本大地震でもそうだし、近年たびたび発生する水害でもそうです。
突然さようならをしなければならない悲しみ。
あるいは、現在のコロナ禍ではさようならさえ言えないままお別れしないといけないといわれています。
この本はジャンボ機が墜落した御巣鷹山に植えられて一本のもみの木の話ですが、その木はずっとたくさんの悲しみも見守っている「THE FIR TREE(もみの木)」です。
いせひでこさんの優しい絵がそっと寄り添ってくれます。