タイ王国チェンマイのサンカムペン地区のボーサン村がモデルでしょうか。
タイの山間に何百年もの間、傘を作り続けて来た村がありました。
毎年お正月に、村一番の絵付けをした女性が「かさの女王さま」に選ばれ、その人を先頭に傘行列がおこなわれます。
主人公のヌットは、「かさの女王さま」にとても憧れていました。
ヌットはお母さんに、絵付けの作業をしてみたいと申し出ます。
生計のかかっている事ですが、お母さんはチャレンジさせてみます。
私にはとてもできない冒険です。
「学ぶ」とは、「真似ぶ」とよく言いますが、ヌットはお母さんの技法を見よう見まねで見事に仕上げます。
普段から、親の仕事をそばで見てきたのでしょう。
また、絵の才能もお母さんから受け継いでいるのでしょう。
いよいよ、幼いながらも本格的に絵付けの作業を任されることになったヌットは、絵付けの約束である花でもチョウでもない絵を描いて…。
ヌットの描いた絵が素敵でした。
子どもならではの無垢で慣習や規格に捕らわれぬ自由な発想。
いえいえ、それだけじゃない。
本当に描く事が好きで、夢中だったのでしょう。
私にも、とても素晴らしい傘に思えました。
ひょんなことから王様の目に留まり、幼いながら絵付け師として最も大切な“対象を愛している”ということで賞賛される結果に。
読後再び表紙絵を見て、温かい気持ちになりました。