石井先生の絵でしたので手に取りました。
表紙絵から主人公のツェねずみの性格を表した表情に、ストーリーの記憶が蘇って来ました。
他人にどんなに親切にされたって、有難いなんて思わない。
悪いことや嫌なことは全部誰かのせいにする。
果ては、「まどうて(償って)おくれ、まどうておくれ」としつこく詰め寄る始末。
万事がすべてこの調子で、何をしても周囲に当たり散らしていたツェねずみが、次第に世間を狭くしていき、最後には最も危険な“ねずみ捕り”としか交際せざるを得なくなり、・・・。
終盤の人間に対して少々反感を抱いていた“ねずみ捕り”と意外にもつきあえてはいたものの、次第に尊大な態度と言葉遣いのツェねずみに対し、怒り心頭に発した“ねずみ捕り”のアップのページは迫力がありました。
読後息子は、「僕の中にも、ツェねずみのような嫌な性格の部分があるな〜」と苦笑いをしていました。
文章がやや長めと敬遠されている方も、どこかユーモラスで説得力のある石井先生の絵で賢治作品に触れてみてはいかがでしょうか。