私が幼い頃、毎年、我が家と幼馴染の居間に飾られておりました、いわさきちひろさんの慣れ親しんだ懐かしいイラストでしたので、選ばせて頂きました。
愛情あふれる、淡く叙情的な水彩画は、今でも親しまれ、愛されておりますね。
この赤い靴の作品は、恩人を見捨て、自分の欲望の為に赤い靴を選び罰を受け、改心するというお話ですが、この作品を書いたアンデルセンの父親は靴職人でしたが、彼が14歳の時に亡くなってしまいました。そんなアンデルセンは貧乏でそれまで木靴しか履いた事がなかったですのに、父親の死後、初めて皮の靴を作って貰ったのです。そして、このお話に出て来る教会は、アンデルセンが堅信礼を受けた教会がモデルだと言われております。
大人にも子どもにも長く親しまれているアンデルセンの作品は、空想から生まれたものではなく、彼の繊細な心で、生まれ育った環境、故郷の風景、周辺の人々、彼自身の人生を深く見つめ、写生することで生まれたのですね。この赤い靴は、そんなアンデルセンさんの神への侘びの物語なのでしょう。