おこられても、自分の感情を口にしない男の子。
その心の声を読者だけが「聞く」ことになるので、
いつの間にか男の子を応援してしまいます。
給食を大盛りにしてあげたのも、
お友達に虫を見せてあげようとしたのも、
悪気はないことがその表情でわかります。
そして七夕。
たった一枚の短冊をフォーカスするという、
大胆かつシンプルなストーリー。
一生懸命な文字が、心に飛び込んできます。
悲しみの底にいる前半の男の子とは対照的に、
後半では母親と先生の愛情がそそがれ、
幸せいっぱいの笑顔が描かれています。
大人にとっては「わるいこと」でも、
どうしてこういうことをしたのか?
そこには無垢な気持ちがあります。
ついつい子供を叱ってしまう親や先生にとって、
示唆に富む一冊だと思います。
石井聖岳さんの軽妙なイラストもまた、
懐しい感じのする水彩画タッチで味わい深いです。
男の子の感情が巧みに描かれています。