宮沢賢治の作品を読みあさっています。
初めて読む作品でしたが、まるで時間の経過を忘れてしまいそうに
なるぐらい、ゆったりとした気持ちで読むことが出来ました。
小さな谷川の底に広がる、ゆったりとした世界。
柔らかな青を基調とした絵が、さらにその世界観を広げてくれています。
カニの兄弟が話している「クラムボン」とは、賢治の造語とのこと。
意味はわからないのに、なんだかわかりそうな気がして、それもまた
不思議な感覚でした。
カニの兄弟の目の前で起きた出来事は、生命の巡りの1つであること。
そして、トブン、と谷川へ落ちてきた豊かな実り。
そのどれもが、淡々と話して聞かせるお父さんカニの言葉によって、
静かに受け入れることが出来ているように思います。
まるで賢治自身がカニであったかのような表現力。
今更ながら、宮沢賢治という人物の凄さに気付かされました。
私のお気に入りの一冊となりました。