ぐりとぐらシリーズ初期のお話と比較すると勢いには欠けるものの、
絵の奥行きが広がり、場面描写もより細やかになったことで、
風通しのいい、爽やかな読み口を味わうことが出来ます。
よく晴れた春の朝。
ぐりとぐらはサンドイッチとサラダを持って、野原に朝ごはんを食べに出かけます。
そこで出会ったのが、テナガザルのような長い腕を持ったうさぎ、「くるりくら」。
ぐりとぐらとくるりくらは一緒に朝ごはんを食べ、木登りをして、
くるりくらの長い手で雲をかき集め作った雲のボートで、空中散歩に出かけます。
辿りついたくるりくらの家でみんなで「10時のおやつ」を食べ、
くるりくらのお母さんが作ってくれた跳び縄で縄跳びしながら、ぐりとぐらは帰っていく…
というお話です。
くるりくらの歌う歌はどれも語呂がよくて覚えやすく、
晴れた日の散歩ではつい娘と一緒に
「はるかぜ そよかぜ くるりくら とびたい はねたい おどりたい」
と口ずさんでしまいます。
詩人で、自由に腕を伸び縮みできて、さらには雲にも乗れてしまう、
どこか超然としたくるりくらのキャラクターが、とても印象的です。
くるりくらが大きくなったら、いったいどんな大人になるのかな?と
あれこれ考えてみるのも楽しいかもしれません。
この本を「いいな」と思うポイントはたくさんありますが、
中でもとびきり素晴らしいのが、くるりくらとの出会いが晴れた午前中の出来事ということです。
わくわくする春の日の特別な出会いの後に、まだまるまる午後も残っている!と思うと、
まるで全てが上手く噛み合った、幸福な休日を過ごしているような読後感を味わえるのです。
家に帰った後、楽しい余韻に浸りながら、ぐりとぐらは何をして過ごすのでしょうか。
なんと贅沢で豊かな一日だろう、と思わずため息がでてしまいます。
本当に素敵な、楽しい本でした。