昨日、クリスマスの本を特集していた図書館で出逢い、心強くなった一冊です。
「クリスマス」という言葉の響きは、華やかで、楽しくて、キラキラしたイメージではありませんか?
けれど、『かぼちゃひこうせん ぷっくらこ』と同じ画家と訳者の名前に惹かれて手に取ったこの本は、違っていました。
明るい表通りと、暗い裏通り。光の中でクリスマスを楽しむ家族と、それをただ見ているだけの暗がりにいる召し使いたち。街では貧富の差が歴然として表れています。そして田舎には、極端に富んでも貧しくもない、静かな暮らしがあります。いよいよ最後のページには、星と作者の願いが輝いています。(記憶を頼りに、細密な絵を思い出しながら綴りました。)
私は、どちらかというと貧しいほうの家庭に生まれました。そして、「粗衣なるはひとときのこと、教養は身につくもの」と言われて育ちました。ですから、成人式の振袖など、自分には縁が無いものと思い込んでいました。成人式にはスーツで出て、そんな自分に誇りすら持ったものです。
ところが、社会に出ると、職場で、趣味の集まりで、役員会の雑談で、「成人式には振袖を着て当然」のような会話が交わされるのです。その度に、話についていけなくて、みじめな気持ちを味わってきました。
そんな私だからこそ、この絵本は心に響いたのだと思います。昔から、貧富の差というものは存在していたのだということ。この絵本に描かれている貧者ほど、私は苦労なく育ててもらったのだということ。「もう一度、誇りを取り戻そう。」そう思えてきました。
もしもあなたが、私のように、「周りはみんなお金持ち。自分だけみじめ。」そんな勘違いに囚われてしまっていたら、どうぞ、この絵本を読んでみてください。残念ながら、絶版らしいので、ぜひ図書館で!