なんとも重厚な作品です。
初めてキャンバス地に描いた絵で、少女は初めて挫折と屈辱と苦しみを知るのです。
父親の英才教育で、自分の絵に自信を持ったウロでした。
初めて買い求めた、自分の名前と同じ雨露の麻で作られたキャンバス地は、突然亡くなった油絵の大家が注文したものでした。
キャンバスに描いたのが自画像だということが意味深です。
描いた自画像は、翌日には絵の具が流れて見る影もない醜い姿でした。
キャンバスの生地がウロを拒んだのでしょうか。
ウロに己の虚栄心を突きつけたのでしょうか。
ウロは、7回も自画像を描き直します。
7回も醜い姿になった自分の姿に直面します。
直視できないので、父親の作っている花柄の布地を被せて、誰にも見せようとしません。
ウロは、闘っていたのですね。
キャンバスの生地とではなく、自分自身と。
それだから、母親に捨てられたキャンバスを探しあてて再挑戦した時に、憑き物が消えていたのです。
どうして8回目にちゃんと絵が残せたのかは謎です。
朝日につつまれ、にっこり笑っている少女の姿だということが印象的です。
笑えてよかったですね。
翻訳本だから直接は関係ないかもしれませんが、私は少女の名前のウロから、木の洞(ウロ)を想像しました。
木にポッカリと空いた洞は、自分の心を吸い込むような不思議な穴です。
この絵本は、曹さんとリーさんが描いた洞かも知れません。