1月23年のコールデコット賞の発表がありました。
何と、そのうち2作品は邦訳されており、日本の絵本界の感度の良さに感動です。
その邦訳の1つが「どうぶつがすき」で、オナー賞受賞作品です。
原題は、「Me ... Jane 」
パトリック・マクドネルは、「ハグ・タイム」「おくりものはナンニモナイ」あたりで知られる作家。
今回の作品は、何と伝記。
主人公は、ジェーン・グドール。
幼い頃より動物好き。
23歳の時アフリカへ渡り、人類学者ルイス・リーキーに師事し、ルイスの薦めで26歳の時タンザニアのゴンベの森でチンパンジーの研究を始めます。
世界で初めて、草の茎を使ってアリを捕る行動の報告などで、人類固有とされてきた道具使用などの行為や能力がチンパンジーにも存在すること、チンパンジーの性格にも大きな個人差があることを確認するなど、チンパンジー研究の世界的な権威となった女性の伝記です。
やはり驚きは、その時代。
1957年のアフリカに渡るのですが、時代背景を考えるとその強い意志が窺い知れます。
ジェーンは、10歳の時にアフリカに渡って動物と暮らし、本を書こうと決めていたというのですから、驚きに値するものでしょう。
物語は、ジェーンがおとうさんにチンパンジーのぬいぐるみを貰うシーンで始まります。
それからは、ジェーンが如何に自然と接していたかが克明に描かれているのですが、興味深いのは、その好奇心。
自然をいとおしむだけでなく、もっと理解しようと思って、沢山の本を読む姿に共感しきりです。
そして、夢を見ることの大切さを綴られているのですが、最後のページに誰しもが心打たれることと思います。
パトリック・マクドネルのいつものテイストの絵に加え、背景に単色で精緻な絵を挿入しているのが、伝記っぽくて良い効果を醸し出しています。
また、最終ページがジェーンとチンパンジーの写真というのも、洒落ています。
至極シンプルなストーリーではありますが、その分、子供の心に響く作品だと思います。
コールデコット賞オナー賞は、だてではありません