クリスマスの前の晩に、サンタクロースがやってくる風景を、素朴なタッチで描いたアメリカのおばあちゃんの絵本。実際には見たこともない風景のはずなのに、なぜか妙に懐かしい感じがしてしまう。
どのページも可愛らしい、上品な雰囲気で、画家がクリスマスや普通の人々、日々の暮らしを愛し、丁寧に生きてきた様子がうかがえる。心が温かくなる素敵な絵本だ。
作者の遊び心からか、ページをめくるとサンタクロースやトナカイ、橇の様子が少しずつ違う。時々、サンタクロースが別人みたいになっていたりして楽しい。おそらく電気もないような時代に、普通の人々が待ち遠しい思いですごしたクリスマスの前の晩。幸せな温かい家庭の温もりを感じながら、眠っている子どもたちが夢見た世界を、言葉と絵で映し出しているのだろう。
ただものがあるだけの空しいクリスマスしか知らない私は、大人になってからこの素晴らしい本で、本当の温かいクリスマスを体験しようとしている。