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「すこやかな心をはぐくむ絵本シリーズ」刊行記念!『モモンガくんとおともだち』 くすのきしげのりさんインタビュー

「すこやかな心をはぐくむ絵本シリーズ」(全12巻)の刊行がスタートしました。作者はくすのきしげのりさん。
おこだでませんように』をはじめ、子どもの心のひだをとらえたお話を数多く書かれています。
シリーズ1作目『モモンガくんとおともだち』は“勇気をもってふみだす心”がテーマ。作品への思いやシリーズ全体への思いをうかがいました。
3ページ目では、NHKカルチャー青山教室などで絵本の読み聞かせ講座を担当し、本シリーズの付属リーフレットにコラムを寄せているフリーアナウンサーの景山聖子さんに、『モモンガくんとおともだち』を例に、読み聞かせのポイントをうかがいました!

モモンガくんとおともだち
モモンガくんとおともだちの試し読みができます!
作:くすのき しげのり
絵:狩野 富貴子
出版社:あかつき教育図書

いつも高い木の上から、お友だちが遊んでいるのをみているだけのモモンガくん。「あそぼうってこえをかけてごらん」と言われても、最初の一歩がふみだせません。ある日のこと……。 引っ込み思案な子どもの背中をそっとおす両親のはげましと、友達の優しさを柔らかなタッチであたたかく描いた絵本。

モモンガくんの気持ちによりそって

───4月からはじまるあたらしい生活を前に、ともだちができるかどうか不安に思っている子どもたちの背中をおしてくれそうな絵本が誕生しました。『モモンガくんとおともだち』です!
まず、表紙のモモンガくんの姿に、胸がきゅんとなってしまいました。まるいおめめが可愛い〜!


くすのきしげのりさん

可愛いでしょう(笑)。狩野富貴子さんが描かれる動物の表情が、すごく素敵だなあと、以前から思っていたので、『モモンガくんとおともだち』の構想を練りはじめたときから、この作品の絵は狩野さんにおねがいしたいと思っていました。

───『ふくびき』(小学館)という作品で、狩野富貴子さんとはご一緒されていらっしゃいますよね。

狩野さんは人間の子どもも動物の子どもも表情豊かに描かれるので、絵に引きこまれますね。
このお話の主人公、高い木のうえにすむモモンガくんには、まだ、おともだちがいません。
おかあさんは「みんなとあそんでいらっしゃい」というのですが、地面におりたことがないモモンガくんは、こわくておりられない。それに、どうやってみんなとおともだちになればいいかわかりません……。
みなさんも、こんな気持ち、経験ありませんか。
たとえば4月から保育園や幼稚園に入園する子、小学校に入学する子は、あたらしい生活のはじまりをとても楽しみにしているでしょう。子どもはみんな、ともだちができたらいいなあという思いをもっています。
でも、楽しみな気持ちと同じくらい、不安に思ったり、心配だったりしますよね。「ともだち、本当にできるかな」「うまくできなかったらどうしよう」と。



───モモンガくんの気持ち、よくわかります!
「『いっしょにあそぼう』っていえばいいんだよ」とおとうさんがいっても、モモンガくんは、みんながあそぶのを木のうえからそっと見ているだけ。ひっこみじあんなわが子の姿を重ねる方もいらっしゃるかもしれませんね。
なぜ、主人公はモモンガくんだったのですか?

表紙の絵を見てください。モモンガくんが手に何かもっているでしょう? これは、赤い風船なんです。
ある日モモンガくんは、森のみんながさわいでいる声に気づきます。穴から外をのぞくと、となりの木の枝に風船がひっかかっています。
モモンガくんにとっては、おうちのとなりの木。だけど、地面から見上げれば、高〜い木。ウサギさんがちからいっぱいジャンプしたり、クマくんが木をゆらしたりしても、だれも風船をとることができません。
この木にひっかかった風船をとるというストーリーにふさわしい、空をとべる動物ということで、はじめはムササビくんを主人公に考えました。でも、ムササビよりモモンガのほうが体が小さいので、やはりこの作品の主人公にはモモンガくんがいいのかなと思いました。


とびだす直前、どきん、どきん、とする様子が伝わってきます!



───モモンガくんの心の葛藤がていねいに描かれているせいでしょうか。まるで自分のことのようにドキドキしてしまいます。いきたいけれど、なかなか出ていけないんだよね。わかる、わかる。
おかあさんとおとうさんが、そわそわしているモモンガくんに、「さあ、いってらっしゃい」「だいじょうぶさ」と声をかけます。このタイミングが絶妙ですよね。


左は、各地で絵本の読み聞かせ講座を開講されている景山聖子さん。


おとうさんとおかあさんは、「きっとこの子のなかには“自分ならとれるのに”という気持ちがあるんだな」と感じたのやね。モモンガくんが一歩ふみだそうとしている、その心の高まりにあわせて、背中をおしてあげる。まさしく「啐啄同機(そったくどうき)」です。
(*啐啄同機とは……卵が孵化するとき、なかから殻を破ろうとするひな鳥の行動にあわせて、外から卵の殻を軽く小突いて刺激を与え、自力で内側から殻を破るようにうながす、そのタイミングをいう。「さいたくどうき」ともいい、もとは仏教の言葉。)


───「……よし!」と勇気をふるってとびだしたモモンガくん。この場面のさわやかさ、けなげな愛らしさに胸を打たれます。おかあさんたちが後ろで見守っているのも素敵(笑)。

僕も大好きな場面です。空をとべるというのはモモンガの特性です。ほかの動物とちがって、モモンガくんだからできること。その能力を生かして一歩ふみだし、風船のひもをパッと手につかみます。

ところが、森のみんなは口をぽかんとあけて目をまるくしたまま。モモンガくんは「いっしょにあそぼう」がいえなくて、泣きそうになるんやけど……。

───わー、この場面もドキドキします!

読者としては「これからどうなるのやろう」と思うでしょう? でもみんなは、一瞬の驚きのあとに、「すごいやすごいや」「どうしてそらがとべるの?」と大喜び。
モモンガくんはやっと「ぼ、ぼく、モモンガです。……いっしょにあそぼう」っていえるんです。


すると、みんなは「あそぼう! モモンガくん」「なにして、あそぶ?」とすぐに受け入れてくれる。
このときの森の動物たちのようすを、絵や言葉からしっかり感じてもらえたらなあと思います。
一歩ふみだせば、受け入れてくれるともだちがたくさんいる。いちばん描きたかった場面です。

───モモンガくんの緊張とよろこびが伝わってきます!
入園や入学の前に、『モモンガくんとおともだち』を、子どもといっしょに読んであげられたらいいですね。
「そうか。『いっしょにあそぼ』っていってみたら、だいじょうぶなのかもしれない」と、子どもたちが勇気づけられるかもしれませんね。

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くすのき しげのり

  • 1961年徳島県生まれ。鳴門市在住。小学校教諭、鳴門市立図書館副館長などを経て、現在は、児童文学を中心とする創作活動と講演活動を続けている。絵本『おこだでませんように』(小学館)が、2009年に全国青少年読書感想文コンクール課題図書に、2011年にはIBBY(国際児童図書評議会)障害児図書資料センターが発行する推薦本リストに選出される。同作品で第2回JBBY賞バリアフリー部門受賞。また、『ふくびき』(小学館)、『ともだちやもんな,ぼくら』(えほんの杜)と共に第3回ようちえん絵本大賞を受賞する。その他の絵本に『もぐらのサンディ』シリーズ@〜C(岩崎書店)、『あたたかい木』(佼成出版社)、『えんまのはいしゃ』(偕成社)、『みずいろのマフラー』(童心社)、『ええところ』(学研)、『メロディ』(ヤマハミュージックメディア)など多くの作品がある。

作品紹介

モモンガくんとおともだち
モモンガくんとおともだちの試し読みができます!
作:くすのき しげのり
絵:狩野 富貴子
出版社:あかつき教育図書
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