高い高い木の上からちょこんと顔を出して、お友だちが遊ぶ姿を見ているのはモモンガくん。
モモンガくんには、まだお友だちがいないのです。
「みんなと遊んでいらっしゃい」とお母さんに言われても、
「一緒に遊ぼうって声をかけてごらん」とお父さんに言われても、
なかなか最初の一歩がふみだせません。
そんなある日のこと、モモンガくんがみんなの声で目を覚ますと、隣の木の枝にあかいふうせんがひっかかっていました。
「ふうせんをとろう!でもどうやって?」
森のみんなは、ふうせんを見上げながら色々なアイデアを試します。
でも、なかなか取ることができません。
モモンガくんは、ソワソワしながら、その様子を見ています。
ほら、モモンガくんの出番だよ。
読者がそんな声をかけたくなる頃、お父さんとお母さんがモモンガくんの背中をそっと押してあげます。
モモンガくんの小さな胸が、ドキンとします・・・。
引っ込み思案なモモンガくんは、どこかで見覚えがあるような。
わが子でしょうか、お友だちでしょうか。
それとも小さい頃の自分でしょうか。
みんなが色々な気持ちを持って、「その瞬間」をドキドキしながら見守ります。
勇気をもってふみだす心について描いたこの絵本は、「すこやかな心をはぐくむ絵本」シリーズの記念すべき第1冊目になります。
ともだちといっしょにあそぶことができたモモンガくんの気持ち、お父さんとお母さんの気持ち、新しいお友だちができた森の動物たちの嬉しい気持ち。それぞれの気持ちを楽しめるように、と思いを込めて書かれたくすのきしげのりさんのお話は、子どもに寄り添い、大人には気づきを与えてくれます。
そして、なんといっても狩野富貴子さんの描く、柔らかくて可愛らしいモモンガくんの表情に心をつかまれてしまいますよね!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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