ディズニープリンセス じぶんもまわりもしあわせにする おやくそくブック(Gakken)
SNSで話題!すてきな大人になるために大切にしたい「おやくそく」を紹介する絵本。
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インタビュー
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2015.07.30
みどころ
地球が生まれてから、今この瞬間までの長い長い命のリレーを、劇場仕立てで壮大に物語ります。名作絵本『せいめいのれきし』が、初版刊行から半世紀ぶりに生まれ変わりました。現在の知見をもとに本文を改訂。監修は、恐竜研究の第一人者・真鍋真氏。遠い昔から続く、はてしない時のお芝居。次の主人公はあなたです!
───『せいめいのれきし』との出会いを教えてください。
小学生の頃から身近にありました。景色の絵やうしろの見返しの博物館の絵が好きでした。不思議な生き物がたくさん描かれていて、図鑑に近い楽しさもありましたね。時代の移り変わりが舞台仕立てで語られるのにも心惹かれました。父がイラストや装丁の仕事をしていたので、子どもながらこの本のデザインやつくりにも関心があったように思います。同じバートンさんの『ちいさいおうち』も大好きでした。
───小さい頃から虫や恐竜がお好きだったんですか?
当時は将来博物館に勤めるなんて想像もしていなかったし、東京生まれの東京育ちで、昆虫採集もデパートの屋上でするような子どもだったので、化石にさわったのも大学生になってからなんです。
そういえば、子どもの頃、図鑑のすみにアオダイショウの絵があって、それがこわくて触るのがいやで、アオダイショウの絵に指が触れないようにページをめくっていました(笑)。リアルな絵だと、は虫類は嫌いという人もいると思いますが、バートンさんの絵はそれを感じさせませんね。
───『せいめいのれきし』の魅力をたっぷり教えてください。
この本の素敵なところは、三葉虫や恐竜といったその時代の生き物が、主役として次々に舞台に登場することです。バートンさんは、最後のページで、本を読む子どもたちに、これからはあなたたちの時代なのですよ、と語りかけます。三葉虫や恐竜が主役の時代から人間の時代へと移り変わり、今の自分も歴史の中では通過点となって、また次の時代にバトンタッチしていく。そんな風に、進化の歴史を、単に科学的な事実ではなくて、もっと身近で心温まるストーリーに感じさせてくれます。私たちから縁遠いような不思議な生き物も、ずっと「進化」でつながってきたんだと気づかせてくれます。
───本当にたくさんの生き物が登場しますね。いろんな動物が現れては消えていきます。
じつは、バートンさんは、生き物の成功物語や、進化の見方を語ってはいません。淡々とそれぞれの時代の主役達と環境の変化を語っているだけなんです。今でも、恐竜は環境の変化に適応できなかった失敗作だと言われてしまうことがありますが、原作が描かれた1960年代はもっとその考え方が当たり前でした。けれど、バートンさんは、恐竜は生きるのに失敗して絶滅してしまったんだとか、私たちの祖先のほ乳類がいかに賢くふるまったか、なんてことは言わずに、さりげなく人間の時代を迎えています。そんな風に過去の生き物たちを、親近感や愛情を持って見つめるというのはなかなか出来ないことですよね。
───今回真鍋先生がかかわられた『改訂版』について、今までと変わったところを教えてください。
───ほかにはどんなことがありますか?
もうひとつは、恐竜の一部が鳥に進化したことをもりこみました。これは日本語版オリジナルの改訂ですね。バートンさんは今では恐竜には、博物館の化石でしか出会えないと書いていましたが、じつは今では、恐竜は完全に絶滅してしまったわけではなくて、一部は鳥に姿を変えて、現代も進化を続けていることが分かっています
だから、みなさんがスズメやハトやカラスを見たら、それは恐竜の子孫であることを思い出してもらえたらいいなと思います。
───生物の名前もいろいろと変わりましたね。ディニクティスがダンクルオステウスになったり……。
学名を直したり、現在の読み方に修正したり、いろんなところでやりました。古いバージョンだと、いろんな生物について、教科書や図鑑で調べようと思っても、あれ載っていないと思うことがあったかもしれません。
今回の改訂できちんと対応したので、もっと調べたい、博物館で化石を見てみたい、というときに直接できるようになりました。
───ブロントサウルスもアパトサウルスになりました。
ちょっと微妙なんです(笑) ブロントサウルスとアパトサウルスは同じ恐竜であるべきだ、学名を統一しなくちゃというときに、先につけられた名前に統一されて、アパトサウルスになっちゃったんです。
でも今年の春に新しい論文が出て、「ブロントサウルス」がまた復活したんです。今回の改訂版ではアパトサウルスに直したけれど、今後その新しい論文が支持されるようになると、ブロントサウルスに戻さなくてはならなくなるかもしれないです(笑)。
───う〜ん、おもしろいですね! 子ども達はみんな物知りで、恐竜が好きな子は、名前も含めて、いろんなことを知っていますよね。
日本は、本や図鑑が充実していて、みんなよく知っていますね。図鑑なんて、毎年のように改訂されていてすごい。子ども達、大人達、みなさん関心が高いですね。
今回の改訂で、『せいめいのれきし』に登場する生き物たちも現代の名称や説に合わせて修正ができたので、また今の「新しい読み物」として読んでいただけたらうれしいです。
───『せいめいのれきし』はページも多いし、じつはおはなしもちょっとむずかしいですよね。でも、バートンさんの絵がとても楽しいので、小さい子どもでもけっこう読んでいます。ただ、今の事実とはちがうところもあって、気になりませんか?
学術的に見たら、絵の描写も古くなっているし、内容も新しくした本を作りたくなるかもしれません。CGなどでより詳細な絵に変えるべきだという意見もあるでしょう。たとえば、今でも有名なティラノサウルスがしっぽをひきずっている感じは昔の1960年代のイメージなんです。今ではしっぽをやじろべえのように伸ばして、のろのろ歩きではなくて、素早く走り回っていたと分かっているのです。
けれど、私はバートンさんの、あたたかな絵のタッチがみんなの「知りたい」という気持ちを育んでくれているように思うのです。この本は、情報量も多いし、必ずしもやさしくはありませんが、絵のタッチがハードルを下げてくれていて、親しみを感じさせてくれているのではないかと思っているので、新しくかえるより、この絵本をつなげていきたいです。
───バートンさんの絵には、いろんなしかけがあって、何度見ても「あ!こんなところにこんな生き物がいたんだ!」と新しい発見があって驚きます。繰り返し読んで楽しい絵本ですね。
こんな見方もできますよ。下の画像の左ページと右ページの絵を、よく見比べてみてください。
左のページには、シルエットに骨格がのっています。バートンさんが実際にニューヨークのアメリカ自然史博物館に通って、スケッチされたもので、骨とか歯の化石も描かれています。
右ページの舞台の絵だけでもお話を進めていけるのですが、じつは左ページに描かれている博物館の展示物の絵でも、いろいろと解説されているんです。言葉で説明しているわけではないのに、情報量がすごく多い。左ページの骨格を見てから、バートンさんの気持ちになって、右ページの生き物の世界を想像してみるとおもしろいかもしれませんね。
───たしかに、左側は科学博物館でよく見られる骨格ですね! わあ、これは素敵な発見です!
バートンさんの絵はすごくさりげないんです。たとえば、三畳紀という時代(32ページ)。いまから2億4000万年くらい前に、はじめて舞台に恐竜が登場します。左のページでは、プラテオサウルスが、ソテツのような植物を食べています。
じつは、この絵にすごい事実が語られています。
恐竜以前は、は虫類って基本的に肉食なんですよね。他の動物を襲って食べていた。ところが、恐竜のなかでなぜか植物を食べることに挑戦したチャレンジャーがいて、植物の魅力に気づいたんです。肉を食べるものはそんなに数も増やせず多様化できないんだけど、植物を食べるようになって、一気に恐竜が多様化していったんです。
こうしたことはストーリーには出てこないのですが、左ページにわざわざ植物を食べる恐竜を描いて説明しているんです。この時代に草食の恐竜が出てきたことがすごく大きな出来事だったんだと知ってからこの絵を見ると、さりげなく表現されていることに驚いてしまいます。
───真鍋先生ならではの視点、すごく面白いです! 知識を持っていると、さらに深くこの絵本を楽しめるんですね。バートンさんは、たくさんのストーリーを絵のなかに盛りこんでいるんですね。
どのページにもたくさんあって話題はつきないのですが、ひとつ気づいただけでも見方が変わってきます。ぼくはたまたま恐竜の専門なので、このページを一生懸命見ちゃうんですが、たくさんの情報が盛り込まれていて、バートンさんはこんな風に考えて描いたんだなと思うことがあります。たとえば、ジュラ紀(34ページ)の右のページに、肉食恐竜に追いかけられる小さな鳥の絵が描かれています。
鳥の起源は、今では木の上にのぼった小さな肉食恐竜が枝から枝へ飛び移っているうちに飛ぶことを覚えたと説明されるのですが、昔は、肉食恐竜に狙われて一生懸命早く走っているうちにふっと離陸できるようになったんじゃないかと考えられていました。
だから、こういう風に描かれているんではないかと思うんです。背景を考えながら絵を読み解くと、いろんなことが分かってくる、すごく深みのある本だと思います。
───そこしれない魅力を感じます!
───子どもたちに向けて、真鍋先生おすすめの絵本の楽しみ方を教えてください。
この本を片手に、ぜひ博物館に来て、登場人物(?)を探してみてほしいなと思います。実際に化石の絵が描かれているので、本物の標本と見比べてみてください。実物を見て、またこの絵本を読むと、もっと絵を深く楽しめるし、実際の標本を見て、あ、こんなに大きいんだ、足が太いんだ、という新しい発見の入口になるかもしれません。
普段、博物館に来ると、自分の好きな動物や時代ばかりを見てしまいますが、この絵本では、さまざまの生き物のつながりが時代軸にそって語られているので、今まで関心のなかった時代や生き物に出会えるんじゃないかと思うんです。自分の視野を広げてくれるきっかけになるかもしれませんね。
───最後に、読者の皆さんへ一言お願いします!
改訂版の刊行をきっかけに、学術的に内容が正しいとか最新であるということだけでなく、この絵本が好き、描かれ方が素敵という気持ちをみなさんと共有できたら、とてもうれしいです。じつは私も子どもの頃この絵本が好きだったという人と出会えると楽しいですね。小さいお子さんには高度な内容でもあるので、まず大人が読んであげてください。大きくなってから、自分で読んだり、今度は誰かに読み聞かせたりして、この絵本がずっと読み継がれていくことを願っています。