出版社エディターズブログ
2023.11.27
児童文学作家たかどのほうこさんの最新作、『ピースケのいえで』が刊行となりました!
みどころ
おなじマンションに住むみどちゃんとのぶちゃんは仲良し。でも、のぶちゃんはときどきぷりっとすることがあります。
今日も遊んでいるうちにきげんが悪くなったので、のぶちゃんの家を出たみどちゃん。家に帰ってきて手提げを見るとびっくり! なんとのぶちゃんの大事にしているうさぎのピースケのぬいぐるみが入っていたのです。前にもまちがえて持って帰ってきてしまった時、「もうまちがえないでね!」なんて言われたことがあるのに……。なぜみどちゃんの手提げに、ピースケが入っているのでしょう。
みどちゃんが部屋から出ていくと、ぬいぐるみたちがピースケにつぎつぎに質問をします。
<なにがあったの? きかせて>
<それは たいへんだったなあ>
<……ここの なかまに なるのが いいよ>
その時、「ピンポーン!!」とインターホンを3回ならしてのぶちゃんがやってきました。
ハッとしてドキドキするみどちゃんとぬいぐるみたち。いったいどうなるのでしょう。
さっきまで仲良く遊んでいた友達が急にぷりっとしてしまって、どうしたかな? なんて気持ち、大人はもちろん、小さな子どもたちも感じたことがあるのではないでしょうか。みどちゃんの複雑な気持ちに共感する子も多いのでは? けれど、お友達と遊ぶってやっぱり楽しい! たかどのほうこさんの温かなユーモアが読む子どもたちをホッとさせてくれることでしょう。のぶちゃんがやってきてからの展開は、なんだか魔法を見ているかのようです。
個人的には、ぬいぐるみたちがにんげんのある習性について話す場面に、にんげんってそういうところ確かにあるかも……とうんうんうなずいてしまったり、ぬいぐるみたちにみんな名前があって、おしゃべりの内容にそれぞれの性格が垣間見えるところや、協力し合う温かな関係性に嬉しい気持ちになったり。
なんだかふしぎなことが起きた!?と思ったら、それはぬいぐるみたちだけが知っているひみつかも。そばにいるぬいぐるみたちを観察しながら、楽しい想像をどこまでも広げてみてくださいね。
のぶちゃんちの ピースケが、なぜか みどちゃんの いえに!
べそを かきながら ピースケが わけを はなすと、ぬいぐるみたちの おしゃべりが はじまりました。
そこへ のぶちゃんが やってきて、みどちゃんも ぬいぐるみたちも ドキドキドキ……。
クスッと わらえて たのしい ないしょの おはなし。
日ごろ子どもたちに本を手渡してくださっているさまざまな立場の方が、『ピースケのいえで』を読んだ感想をお寄せくださいました。
●ピースケの家出の、切実で可愛らしいこと! ぬいぐるみたちの間にも友情があって、そのゆかいなおしゃべりに耳をすますのも楽しい1冊。
わが子は絵本のまねをして、家中のぬいぐるみを並べて遊んでいました。
ひともぬいぐるみも、大事にされてうれしいのは一緒ですね。
(フリーアナウンサー・絵本専門士 近藤麻智子さん)
●ぬいぐるみたちのつぶやきが可愛くてたまりません。ぬいぐるみたちの気持ちに気づいてあげたいですね。
(ティール・グリーン 種村由美子さん)
●ぬいぐるみたちの会話は、そうやって話しているに違いないと確信するほどにリアルで、幼いころ、家中のぬいぐるみを集めて友だちや妹とごっこ遊びをしたことを思い出しました。
(大阪国際児童文学振興財団 土居安子さん)
●私も、ぬいぐるみたちは夜になると遊んでいると思っていました。日常のなかにある、ちょっと不思議で楽しいお話、文庫にくるおともだちにこっそり教えてあげたいです。
(大阪府子ども文庫連絡会 天瀬惠子さん)
ピースケにめんどりのたまおばさん、こぶたのプーコ、ライオンのライさま……。
たかどのほうこさんが描くぬいぐるみたちは、みんな個性的でとってもかわいい! ないしょのおしゃべりにもひきこまれます。
●みどちゃんがのぶちゃんとの間で感じるさまざまな気持ちが、手にとるようにおはなしと絵から伝わってきます。読む子どもたちも、一緒にドキドキしたり、ほっとしたり、いっぱい共感して心を動かすことでしょう。
(絵本ナビ 秋山朋恵さん)
●のぶちゃんも、いい味を出していますね。ともだちとの性格の違いや心の機微——子どもたちが日常で感じている自分の気持ちと重なるのではないでしょうか。
(ハックルベリーブックス 奥山 恵さん)
●2人とぬいぐるみに起きたできごとが、突拍子もないことで解決されるのではなく、物語の中にあるいろいろなことが自然と重なりあって最後につながる。それが、すてき!
(目白のえほんや にこにこ書店 岩田亜紀さん)
●一気に物語にひきこまれて、「こんな子、いるよね」「うちのぬいぐるみはこんなおしゃべりしてるかも!」と、親子の会話もはずみました。
(ブックハウスカフェ 茅野由紀さん)
●ママやパパに読んでもらうのも楽しいし、小学生なら、1人読みの第一歩にもぴったりですね。
(JPIC読書アドバイザー 諸岡弘さん)
●しっかりした物語がありますが、会話のテンポがよく、キャラクターが鮮やかに立ち上がってきます。自分ではじめて読む1冊にもおすすめです。
(図書館司書・JPIC読書アドバイザー 児玉ひろ美さん)
●園で大好きな先生に読んでもらうのもいいですね。先生のまわりに見たい子がぎゅっと集まって、いっしょにこの物語に入りこむように読むといいと思います。
(ちいさなえほんや ひだまり 青田正徳さん)
●のぶちゃんがおへやにはいってくるところは、ほんとうにドキドキしました。わたしはみどちゃんににてるのかなあとおもいます。なんどでもよみたいです。
●黄色やピンクがかわいくてあったかい感じがして、このおはなしにぴったりだと思いました。
いち早く『ピースケのいえで』の世界を味わってくださったみなさんのお言葉をご紹介しました。みなさんのご感想もぜひお寄せくださいね。
通常、いわゆる「カラー印刷」というのは、C・M・Y・Kの4色のインクを用います。C(シアン)は青色、M(マゼンタ)はピンク系の赤色、Y(イエロー)は黄色、K(ブラック)は黒色です。
ところが今回、『ピースケのいえで』は、ピンク、青、黄の特別なインク(特色)を使って印刷しました。
今回、線のみの絵をパートごとに分け、色指定をして印刷をする、という方法をとりました。
色指定を行うため、それぞれのインクをかけあわせたときにどんな色になるのか、印刷を手がけた小宮山印刷さんがカラーチャートをつくってくださいました。
赤〇%×青〇%はこの色、といったように、色のかけ合わせ方によってたくさんの色を表現することができるのです。
みどちゃんの靴下の色、ひつじのめいちゃんのリボンの色……など細部にいたるまで、たかどのほうこさんご自身の手で色を決めていきました。
鮮やかな3色をもとにうまれた、『ピースケのいえで』の絵。
ちょっと不思議で楽しい物語をより魅力的にしています。
作者のたかどのほうこさんから、童心社が発行する「母のひろば」712号(2023年9月)に、『ピースケのいえで』にまつわるエピソードが寄せられました。
この書籍を作った人
函館市生まれ。『へんてこもりにいこうよ』『いたずらおばあさん』で路傍の石幼少年文学賞、『十一月の扉』『おともださにナリマ小』で産経児童出版文化賞を『わたしたちの帽子』で赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞をそれぞれ受賞。その他の作品に『すてきなルーちゃん』『トランプおじさんとペロンジのなぞ』『トランプおじさんと家出してきたコブタ』『お皿のボタン』、「つんつくせんせい」シリーズ、『紳士とオバケ氏』『まあちゃんのながいかみ』『ねこが見た話』、「ゆかいなさんにんきょうだい」シリーズ、『ピピンとトムトム』などがある。札幌市在住。