クマダさんのどんぐりコーヒー
- 作:
- はやし ますみ
- 出版社:
- アリス館
絵本紹介
2025.03.13
ある日、クマダさんがどんぐりコーヒーを淹れてみると、良い香りが広がっていき……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『クマダさんのどんぐりコーヒー』。今にも香りが漂ってきそうなこの絵本、いったいどんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
「ちょっと……やってみようかな」
引きこもってばかりいたクマダさんの小さな一歩はここから。コーヒーの香りを吸いこみながら、カーテンと窓を少しだけあけます。
「おや、いいかおり」
そう言いながら扉をあけて家の中に入ってきたのは、お隣のハチダさん。クマダさんの声は小さくてハチダさんには届きません。
コーヒーの香りがふわりと漂ってきそうなこの絵本。力強いタッチでぐりぐりと描かれたクマダさんや、夜空に浮かぶ星、個性的な近所の人たちのなんとダイナミックで魅力的なこと。コーヒーを入れる音や交わされる会話、クマダさんの控えめな笑い声のなんと優しく謙虚なこと。心まで包み込まれるようです。
同時にこの絵本は、引きこもっていたクマダさんが、近所の人たちとのささやかな交流を通して、少しずつカーテンをあけ、窓もあけ、ガチャリと扉をあけ外へと一歩踏み出していく、再生の物語でもあります。
コーヒーを淹れるように焦らず慌てず一歩一歩、ゆっくりと前に進めばいいんだ。そんな気持ちが子どもたちにも届いたら嬉しいですよね。
心に残る小さなムフフ。
タイトルにもある「クマダさん」と「どんぐり」と「コーヒー」。その組み合わせは、不思議と惹かれるものがあります。そこから生まれるのは、懐かしい香り、新しい出会い、誰かの幸せそうな顔、心に残る小さなムフフ。そしてどんぐりマフィン。そういうもの一つ一つが次の行動を起こすきっかけになってくれるのかもしれませんよね。いいなあ、いつかクマダさんのどんぐりコーヒーを味わってみたい!
この書籍を作った人
1968年京都府生まれ。京都精華大学美術学部デザイン学科卒業。第10回ピンポイント絵本コンペで優秀賞受賞。作品に『ねこぼん』(偕成社)、『うそうそかわうそのむかしばなし』(小学館)、『たんぼレストラン』(ひかりのくに)、『ねーねーのしっぽ』(イースト・プレス)、『クマダさんのどんぐりコーヒー』(アリス館)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。