イギリス生まれの大判のしかけ絵本『WORLD ATLAS 世界をぼうけん!地図の絵本』が翻訳出版されました。カーキ色の服に探検帽というサファリルックでご登場くださった、編集者の宮田和樹さんにお話をうかがいます。 同時出版された、絵本のデジタルアプリ版『ベアフット ワールドアトラス 世界をぼうけん!地図の絵本』についても後半でお聞きします。それでは宮田さんのご案内で地球探検に出発!
───こんにちは。きょうはよろしくお願いします。
カーキ色の服に探検帽をかぶって登場してくださいました(笑)。帽子が特徴的ですよね。
「ピスヘルメット」といって見た目よりもかなり軽いです。たたいてみるとコンコンと音がするでしょう。中はマメ科の植物のずい(ピス)で作られています。イギリスの探検隊がアフリカ探検時に使いましたが、これはフレンチタイプです。
絵本には探検家のエピソードもいろいろ登場するんですよ。あとでお見せしましょう。
───よろしくお願いします!
●海から地球を眺めてみよう!
- WORLD ATLAS 世界をぼうけん!地図の絵本
- 文章:ニック・クレイン
イラスト:デビッド・ディーン
翻訳:柏木 しょうこ - 出版社:実業之日本社
イギリスで大人気の世界地図の絵本が、日本語版で登場! この絵本の特徴は、世界の国や地域が、大陸を取り囲む海や、ひとやモノの移動によって、互いにつながっていることに注目したところにあります。どのページにも、めずらしい野生の生きものたちや、世界遺産になっている歴史的な建てもの、遊びやスポーツなど、子どもたちの興味を誘う、さまざまなイラストがちりばめられています。中国の大規模な洋上風力発電所や、「太平洋ごみベルト」など、21世紀を生きる子どもたちが避けてはとおれないエネルギーや環境問題に、しっかり目を配っているのもポイントです。
───最初のページには、太陽系や、生命誕生のミステリー、地図についてのお話。そして「世界の海と大陸」というとてもおしゃれな見開き図があって、次ページから各地域の地図案内がはじまります。
「世界の海と大陸」という言葉に注目してください。ここがふつうの地図絵本とちょっと違うところです。 ふつう地図はヨーロッパ大陸、アフリカ大陸、アジア、アメリカ大陸・・・と大陸ごとの紹介になりがちです。
でもこの絵本は、海の紹介からはじまります。太平洋にはじまり、大西洋、インド洋、南極海・・・とページが展開していく。太平洋は地球でいちばん広い海です。地球上の大陸をぜんぶ足したところで、太平洋の広さにはかなわないんですよ。
海は、呼び名がついていくつかに分かれているけれど、すべてつながる「一つの海」です。互いにまざりあい、人間や生き物の交流の原点になっている。「大陸と海」ではなく、「海と大陸」なんです。
───太平洋のページを開くと、その大きさが実感できます! 左右が開く観音開きになっていますね。
たくさんの海の野生動物たちや、タンカーなどの船が見えるでしょう。一風変わった「コンチキ号」という船が南太平洋に浮かんでいるのが見えます。何だかわかりますか?
1947年に探検家のトール・ヘイエルダールが、南米大陸から海をわたってポリネシア地域へ人が移住できることを立証しようと、原始的な木のイカダで太平洋に乗り出したんですよ。『コンチキ号漂流記』(偕成社)という子ども向けの本にもなっています。
教科書的な地理の勉強には必要ない事柄かもしれませんが、僕は大好きな絵です。
───本当ですね。見ていてワクワクします。
北米沖に浮かぶ「太平洋ゴミベルト」には驚きました。海にこんな場所があるとは知らなかったです。
北太平洋にプラスチックゴミが海を覆い尽くしている一帯があるんです。人間の生活から出たプラスチックゴミの影響で毎年とても多くの海鳥が命を落としているといわれます。子ども向けの地図絵本にこのような事実がしっかり描かれていることは、作者のメッセージが込められた注目すべきポイントでしょうね。 他にも、「海をまもろう!」のところに石油採掘が海の生き物へもたらす影響が書いてあったり、「熱帯雨林をまもろう!」で森林伐採と地球温暖化の問題が書いてあったりと、小さい子にはむずかしい内容もあるかもしれませんが、これからの子どもたちが21世紀後半を生きていくために大事なことがたくさん出てきます。
───小さな窓に「これ、知ってる?」とクイズのようなしかけがあるのが面白いです。ミニ知識が詰まっていて、子どもは夢中になりそう。
「さわって、めくれる」のが絵本の楽しいところですよね。
観音開きで「一目で目の前に世界が広がる」感触、のぞき穴のような小さな窓を開ける感触・・・美しいイラストレーションと一緒に味わえます。
巻末の袋には世界地図(約75センチ×44センチ)が付いているんですよ。僕が働く出版社の女性スタッフたちも「この地図、素敵! 部屋に飾りたいな」と言っていました。
───本当に、子ども用だけにしておくにはもったいない(笑)。私もインテリアとして部屋に飾りたいです!