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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「ハムスターのビリー」シリーズ翻訳者ふしみみさをさんインタビュー

カタリーナさんの住む街、アムステルダム

───最近、カタリーナ・ヴァルクスさんとお会いになる機会はありましたか?

じつは夏に、2か月間、カタリーナの家にいました。

───ええっ!? 間借りしていたということですか?

いいえ、居候です(笑)。いっしょにごはんをたべ、屋根裏部屋で仕事をして。1か月はいっしょに過ごして、もう1か月は、カタリーナたちがバカンスに出かけるので、ねこ2匹と留守番していました(笑)。
きっかけは、わたしがちょうど宿無しになったことでした。フランスで住んでいた物件から引っ越すことになって、宙ぶらりんの間どうしようかなあと思っていたら、カタリーナがうちにおいでよと。息子さんが大学進学で家を出て、3階のひろい屋根裏部屋は誰もつかっていない。夏のバカンスの間はカタリーナとパートナーもいなくなると聞いて。
マルセイユにも、もうひとつつてがありましたが、マルセイユはフランス語が通じるし、土地勘もあるし、わたしにはそちらのほうが楽なんですね。迷ったけど、あえて楽じゃないほうに行ってみようと。
そしたら、すごくよかったです。アムステルダム、とってもいい街でした。

───カタリーナさんが住むアムステルダムは、どんな街なのですか?

中心部は、アムステル川と5本の運河の形によって、クモの巣のようになっています。港町としての長い歴史とともに、自由な都市文化を育てきた街。アムステルダムは世界遺産にもなっているのですが、どの建物も杭の上に建っているんです。すぐ下はやわらかい地層で、さらに下の固い地層にたどりつくまで杭をうちこむ。セントラルステーション(駅)も木の杭の上。
オランダは、国土の4分の1が海抜0メートル以下の国です。海を埋めたて、堤防や運河をつくり、助けあわなければ人間が生きられなかった。一度の水害で大きな被害が出るという点では、日本とも近い感覚があるかもしれません。

木の杭は100年もつ。でも100年しかもたないから、100年ごとに杭をうちなおします(最近のものはコンクリート製。もっと長持ちするそうです)。そうしないとだんだん建物がかたむき、壁に亀裂が入り、ある日パーンと窓が割れたりするんですって。よーく見ると、どの家も微妙に傾いているんです! カタリーナの家の台所で、何気なく材料をテーブルに置くと、ころころっと転がるの(笑)。
フランスより寒いですよ。夏が短くて、光は白く透明感がある。北欧の雰囲気に近い感じです。どの建物にも日ざしをとりこむための大きな窓があります。壁はみんな白くて・・・。

カタリーナの家は2つの運河の角にあり、アムステル川もすぐ近く。窓辺の机で仕事をしていると、日が沈むすこし前、運河に光が反射して、チラチラと光がうごく。風で街路樹がゆれれば、影もうごく。顔にチラチラっと光があたる・・。
家の前の運河に沿って、ぐるっーとしばらく歩いていくと、アンネ・フランクの家、ナチスのゲシュタポにつかまるまでの2年間暮らした隠れ家があります。
夏の間は「ハムスターのビリー」シリーズの、日本語訳制作が進行中だったので、見返しの色はこれでいい? 登場人物の名前はどうする? 表紙はこの感じでどう?など、こまかい打ち合わせがたくさんできてスムーズでした。
彼女はちょうどビリーシリーズの5作目を描いていましたよ。

───5作目! 日本では3作目までの翻訳ですが、まだつづきがあるんですね。

最初は、『てをあげろ!』『つかまえろ!』でやめるつもりだったみたい。でも子どもたちに人気が出て、「続きをかいて」ってお手紙がいっぱいきたんですって。それで3冊目の『インディアンはどこ?』を描いた、と。
よく子どもたちからカタリーナに手づくりのプレゼントが届くんです。たとえば、ヴァルクス家の本棚に、もしょもしょっとした棒みたいなものが2本あって、首のあたりに結んだ紙ひもに「ジャン=クロード」「ビリー」と、ひどくつたない子どもの字で書いてありましたよ。その名札がなければ、とてもミミズとハムスターには見えなかったけど(笑)。
カタリーナとわたしはそれぞれの部屋で仕事をしていましたが、絵についてはやっぱり迷うみたいで「どっちがいいと思う?」と2つ並べて意見を聞かれたこともあります。友だちの家のおしゃべりインコの話をしたら、おもしろがって「(5作目に)インコいれちゃった」といっていました。
4作目『ビリーのパーティ(仮訳)』もいいんですよ〜。なんと、ジャン=クロードの弟が登場するの。ビリーシリーズの3冊がみなさんによろこんでもらえたら、つづきの絵本も訳せるので応援してくださいね。

───はい、もちろん! お話をうかがってあらためてカタリーナ・ヴァルクスさんの絵本の世界がだいすきになりました。最後に、絵本ナビの読者へメッセージをおねがいします。

「ハムスターのビリー」シリーズは、とっても楽しいお話ばかりです。
『てをあげろ!』は手足のないミミズに手をあげろ!といって友だちになっちゃうし、『つかまえろ!』はつかまえるなんてとてもむりそうなバッファローに投げ縄をかけたビリーが、ふりまわされて大変なことになっちゃう。
『インディアンはどこ?』では、インディアンに会いたくてビリーはジャン=クロードをさそって出かけていくけれど、なんとのろしの合図をまちがえて、矢が飛んできます!
とぼけたユーモア、ドキドキの展開、そして読後感のあたたかさが魅力の「ハムスターのビリー」シリーズを、親子でぜひ楽しんでくださいね!

───ありがとうございました!


記念にパチリ

いかがです? みなさんも「ハムスターのビリー」シリーズ、まずは3冊を読んでカタリーナさんの世界を楽しんでくださいね。

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インタビュー:磯崎園子(絵本ナビ編集長)
文・構成:大和田佳世(絵本ナビライター)
撮影:所靖子

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ふしみ みさを

  • 1970年埼玉県生まれ。上智大学仏文科卒。絵本を好きになったきっかけは、子どもの頃父親が、自分や近所の子を主人公にして漫画付きのお話をしてくれたこと。20歳の時、パリと南仏エクサンプロヴァンスに留学。洋書絵本卸会社、ラジオ番組制作会社、餃子店経営を経て、海外の絵本や児童書の翻訳、紹介につとめている。ペットは、顔、頭、目、耳、鼻、性格ともに悪い、忠義心のないラブラドール。
    おもな訳書に『うんちっち』(あすなろ書房)、『トラのじゅうたんになりたかったトラ』(岩波書店)、『どうぶつにふくをきせてはいけません』(朔北社)、「せんをたどって」シリーズ(講談社)、『トトシュとキンギョとまほうのじゅもん』(クレヨンハウス)、『ホラー横町13番地』(偕成社)、『おやすみ おやすみ』(岩波書店)、「ハムスターのビリー」シリーズ、『ゾウの家にやってきた赤アリ』『大スキ! 大キライ! でも、やっぱり…』(ともに文研出版)など多数。

カタリーナ・ヴァルクス

  • 1957年オランダ・デビルト生まれ。18歳までフランスで暮らす。フローニンゲン美術大学卒。芸術家として活躍後、息子の誕生を機に子どもの本を作りはじめ、温かさととぼけたユーモアにあふれる作品をつぎつぎと生みだしている。アムステルダム在住。おもな著作に、「ハムスターのビリー」シリーズ、『ゾウの家にやってきた赤アリ』(ともに文研出版)、『リゼッテとみどりのくつしたかたいっぽう』(クレヨンハウス)などがある。

作品紹介

てをあげろ!
てをあげろ!の試し読みができます!
作:カタリーナ・ヴァルクス
訳:ふしみ みさを
出版社:文研出版
つかまえろ!
つかまえろ!の試し読みができます!
作:カタリーナ・ヴァルクス
絵:ふしみ みさを
出版社:文研出版
インディアンはどこ?
インディアンはどこ?の試し読みができます!
作:カタリーナ・ヴァルクス
訳:ふしみ みさを
出版社:文研出版
ゾウの家にやってきた赤アリ
ゾウの家にやってきた赤アリの試し読みができます!
作・絵:カタリーナ・ヴァルクス
訳:伏見 操
出版社:文研出版
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