●はな子は戦後初めて日本にやってきたゾウ
───『せかいでいちばん手がかかるゾウ』を読んで、はな子が68年も生きていることに驚きました。小さい頃から名前を聞いていた「はな子」が今も元気に子どもたちを喜ばせているなんて! 元々、はな子はどういう経緯で、この井の頭自然文化園にやってきたのですか?
はな子は戦後初めて日本にやってきたゾウなんです。当時は、まだタイとの国交がなかったのですが、日本の子どもたちにゾウを見せたいと、交渉が行われ、昭和25年にはな子はやってきました。最初は上野動物園で他のゾウたちと一緒に暮らしていましたが、昭和29年、上野動物園から当時、まだゾウのいなかった井の頭自然文化園にやってきたのです。
───はな子と聞くと、絵本『かわいそうなぞう』(金の星社)のゾウの「花子(トンキー)」を思い出すのですが、名前の由来は「花子」から来ているんですか?
───戦後から現代まで…。改めて、はな子が長寿であることに気づかされます。そんなはな子ですが、「世界で一番手がかかるゾウ」とも言われていることも、この絵本で初めて知りました。
───今は何人くらいの方がはな子の飼育に関わられているんですか?
4人の飼育員と、獣医さん2人がチームを組んで、エサや体調管理など相談しながら飼育を行っています。ただそれは、はな子だけが特別なのではなく、ほかの動物の飼育も同じようにチームを組んで行われているんです。
───絵本を読んで、はな子の歯が1本しかないこと、そのためエサを毎日細かく刻んで与えていることに、動物園の皆さんのはな子に対する愛情を感じました。同時に、はな子が過去に2人の人を死なせてしまっていることも初めて知りました。
───やはり、体が大きい分、人間への危険も大きくなるのでしょうか…。
そうですね。はな子はちょっと体を動かしただけでも、我々人間にとっては大怪我につながってしまいますから…。飼育方法の変化に対しては多くの方からご意見を頂きました。もちろん、その方々もはな子を大切に思ってくださっているのだと思いますが、我々もはな子を大切に思っていることには変わりありません。
───絵本を読むと、68年間はな子を飼育されてきた歴代の飼育員の皆さんも、はな子をとても大切にしてきたことが伝わってきました。「はな子を題材に絵本を作りたい」という話を聞いたときはどう思いましたか?
過去にも何度かメディアで取り上げられているので、基本的には承諾のお返事をしました。ただ、多くの方に手に取ってもらうものなので、飼育員の誰か1人を特別に取り上げることをせず、事実に即した形で作ってほしいというお願いをしました。
───この絵本は井の頭自然文化園の方が制作にも関わられて作られているんですよね?
───はな子に会いに来る方の中には子どもだけでなく、子どもの頃にはな子を見に来た大人の方も多いのでしょうか?
───はな子はこれからも、井の頭自然文化園の人気者だと思いますが、園では他にも色んな動物を見ることができますよね。
家族連れでいらっしゃる方には、動物たちと直接触れ合える「ふれあいコーナー」がオススメです。「いきもの広場」では昆虫や植物など身近な生きものを見つけたり自然の中での様子がより身近に感じられると思います。
───子どもたちにメッセージをお願いします。
はな子に会いに来てください!