●おしりは楽器? 体は王国? 色んな角度から「おなら」に迫る!
───絵本ではおならの正体や音の出る仕組みなど、おならについての説明が徐々に進んでいくのですが、おしりの穴の筋肉が、おならの音を作っているという場面がとても分かりやすかったです。
風船を使って説明しているところですね。『おしりをしりたい』のときもそうですが、絵本を作るにあたって、おならに関する資料を一通り読んで勉強はしているんです。でも、そういうことを描きだすと、知識の羅列になってしまうので、お勉強のはなしは科学的な専門の絵本にお任せして、ぼくの絵本は、テンポの良さと読み聞かせをしたときの心地よさを重視しました。この風船を使ったおならの説明も、難しいはなしが続くと読者も疲れてきてしまうと思って、ここでガラッと印象を変えるためにこの構図にしました。風船を使った実験は、お家でもできるので、ぜひご家庭でも試してもらいたいですね。
───たしかに、親子でやってみたら盛り上がりそうです。おしりを楽器に例えて、オーケストラが登場する場面も、その発想がすごい!って思いました。
おならの本で、オーケストラの場面を描いたのはぼくの絵本がはじめてなんじゃないかな。でも、おならのことを色々調べていったら、自然と「おしりって楽器と同じだ!」ということに気づいたんです。楽器なら音がしっかり出なきゃダメじゃないかって……(笑)。
───たしかに、楽器は音が出なきゃダメですよね。絵の中で気持ちよさそうに演奏している人、おならをしている人を見ていると、おならがとってもポジティブなものに感じますね。
こういう体の仕組みを説明する本は、どうしても細かいカットを使って説明するページが多くなってしまうので、見開きでバン!と見せる絵がほしくて、こういうページをところどころで入れました。
───「からだおうこく」も見開きを使って描かれていて、見応えがありました!
このページはアイデアの段階では、海に浮かぶ島で、入り口と出口だけが分かるような構図だったんです。でも、せっかくなら体の中も分かるようにした方が面白いと思って、中の様子をもっと詳しく描きました。
───よーく見ると、歯の役割をしているところがあったり、胃や小腸、大腸の部分があって、この人たちはどんな役割を持っているんだろう……と想像が膨らみました。
帽子をかぶった人たちは血液の役割をしていて、酸素のエナジードリンクを受け取って、胃へ食べ物を運ぶ働きなどをしているんです。胃にはホルモンガールズがいて、胃が活発に働くように応援しています……というように、考えながら描いていたら、どうしても皆さんに知ってもらいたくなってしまい、後ろの見返しを使って説明を入れました。
───見返しには「からだおうこく」の人のつぶやきも一緒に載っているので、見比べてみたり、前のページに登場している人たちを探してみるのも楽しいですよね。
この部分は「しごとば」シリーズや「ぼくのおふろ」シリーズでもおなじみの、絵を楽しんでもらうページでもあります。どうしても、描き込みたくなるんですよね。
───この細かい描き込みのページがあるからこそ、鈴木のりたけさんの作品だと読者は嬉しくなります。前の見返しの「おならことば」も、「おなら」を使った言葉をこんなに考えられるなんて……と尊敬します。
見返しは、結構楽しんで作っています。候補をたくさん出して、その中から絵にしたときにより面白くなるものを厳選しているんです。でも、寝ているときのおならことばは、みなさん経験があると思いますよ(笑)。
───たしかに、今度おならをしたときは「今のは、おならにがし!」と格好よく宣言できそうです。
●おならの描き方にもこだわりが……。
───絵の描き方についても伺いたいのですが、鈴木さんは毎回、新しい絵本を描くときには新しい技法を使うようにされている感じがします。今回は、どんなテクニックを使われたのですか?
今回はあえて、1作の中に画材や描き方を変えた部分を入れてみました。
───画材や描き方を変えた部分ですか……。あ! ひとつは、おならの正体を探るページですね。人の体の中の様子が、はっきりとした線でデザイン的に描かれています。
そうです。この図解のページは、アクリル絵の具を使って、平面的に描いています。もうひとつは、男の子が教室で「かたすかし」をしているページ。背景をパステル風のタッチにすることで、回想シーンであることを、演出しています。
───たしかに、この2場面は今までと違うタッチで効果的に描かれていますね。おならの音の描き方も、新しいように感じました。
これは最初におならの型を作って、そこにラッカースプレーを吹きつけたり、歯ブラシを使って絵の具を散らしたりして、おならの空気が抜ける様子を感じられる描き方をしています。
───やはり、描き方にもしっかりこだわりがありました! それにしても、毎回色々な描き方を考えて、実行されるのは大変ではないですか?
ぼく、結構チャレンジャーなんです(笑)。それに、ぼくの絵を描くキャリアは、絵本作家をはじめてからなので、実はまだ日が浅い。だから、新しい描き方をどんどん試してみたいと思っています。人と違う表現で描けるのも、快感ですし。