●『ぐりとぐら』がきっかけで、子どもそっちのけで絵本にのめり込んでいきました。
─── ここからは少し、大友さんご自身のお話もお伺いしてもいいでしょうか。
大友さんの作品といえば「くまたくん」シリーズや『こんにちは』『おふろだ、おふろだ』など、クマくんを主人公にした絵本が印象的で、その優しい雰囲気が大好きなんですが、最初に絵本を作ろうと思ったきっかけは何ですか?
『ぐりとぐら』。あの絵本を見て、「これなら俺でも描けるんじゃないか」って思ったの(笑)。
でも実際描いてみたら描けないんだよ…。あの絵は本当に天才的だよね。
─── 『ぐりとぐら』はお子さんが読んでいたんですか?
そう。保育園から帰ってきて読んでいたんだよ。それがきっかけになって、子どもそっちのけでのめりこんでいったんだ。元々、絵を描くのは好きだったんだけど、誰かから習ったことはなくて、『ぐりとぐら』みたいなのが描けないと思ったら途方にくれてしまって…。それから絵の学校に通いました。それがセツ・モードセミナー(※)。
そこで出会って絵本作家になった奴らとは、今も時々会ったりしていますね。
ただ、学校に通っているだけじゃ、いつまでたっても仕事はもらえないから、とにかく1冊自分で作って、出版社に持込みをしたんだ。断られても、何回も何回も会いに行って、結局3年通い続けたの。後で担当の人に聞いたら、「普通は1回断られたら、来ないものなんですよ…」って(笑)。でも、それがきっかけで最初の絵本『あらいぐまとねずみたち』を出すことが出来ました。
※セツモードセミナー…イラストレーター・長沢節が創設した美術学校、西村繁男、寺門孝之、メグホソキなど多くの絵本作家を輩出。
─── すごい熱意だったんですね。小さい頃から絵本に興味があったのですか?
それが全然覚えていないんだけど、お袋なんかから話を聞くと、小さい頃は紙芝居の絵を写して自分で演じてたって言うんだよね…。
「講談社の絵本」シリーズや「岩波の子どもの本」シリーズなんかも、お袋が好きで揃えてくれていてね。大好きだったなぁ。
─── 夢中になって読んだ経験があるんですね。
いや、字を読むのが嫌いだったから、全部お袋に読んでもらってた(笑)。
それがあったから、自分の子ども達にも絵本を読んでやったんだけど、あんまり本好きには育たなかったなぁ。息子なんかには「俺たちが本嫌いになったのはオヤジのせいだ」って言われるんだよね。「本は読んでもらうものだと刷り込まれてしまったから、自分で読むようになったら、面倒くさくて読む気がしなくなった」だって(笑)。言い訳だよね。
─── でも、お子さんも大友さんも、読んでもらったという思い出は残りますよね。
絵本ナビの読者には子育て真っ最中という方が多いのですが、先輩として、また絵本作家として、絵本の楽しみ方などのアドバイスがあるとすれば…。
僕は自分が面白いと思ったから絵本を読んでいただけだから、アドバイスなんて大それたことは言えないけれど、親が面白いって感じていない本は、いくら読んでも全然好きになってくれない。そこは子どもの感覚ってすごいなって感心したね。
4人の子ども達もそれぞれ好きな本が違っていて、それがまた個性的で面白かったね。
最終的に本好きにならない子だっているから、あまり頑張りすぎずに、親も子どもと一緒に楽しむのが良いと思います。
でも、とりわけ本好きにならなかった息子も、自分の子どもが生まれたら、当たり前のこととして読みきかせを楽しんでいる。絵本の楽しさが、孫達に伝わっているのはうれしいですね。
─── 最近読んで面白かった絵本はありますか?
幽霊になったおじいちゃんが孫のところにやってくる『おじいちゃんが おばけに なったわけ』。あの作品はスウェーデンの人が書いたのに、死後の感覚とかが日本人の人生観に近くて、すごく面白かったですね。
─── 今日は本当にありがとうございました!今後の作品も楽しみにしています。
ありがとうございます。
今、『いちばんでんしゃのしゃしょうさん』の次回作も話しが進んでるんです。次は運転士さんの話になると思います。
─── もしかして、東京駅で会う女性の運転士さんですか?
そう、運転士のお母さんの話。格好いいでしょう(笑)。今、実際に増えてきてますからね、女性の運転士さん。
─── それはとても楽しみです!
今回は使えなかった東京駅600m上空の写真も、使いたいです!
<取材を終えて>
とても素敵な笑顔で迎えてくださった大友さん。どんな話題になっても、とにかく話が面白い!あっという間に緊張も解けて、笑いっぱなしの取材となりました。特に大好きな電車の話と、大好きな子ども達の話になると、それはそれは嬉しそうな顔になって…(笑)。
大友さんの家には昔から、お子様だけでなく、お子様のお友達や近所の子達まで、いつも沢山の子ども達が遊びに来ていてにぎやかな状態だったそうです。
私達取材陣も、帰る頃には「このまましばらく滞在したい…」なんて(!?)思ってしまうほど、居心地の良い空気が流れているお宅なのでした。
(編集協力:木村春子)