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岩崎書店 えほんができるまで 作家インタビュー岩崎書店様 2017/09/14
「あけて・あけて えほん」シリーズ(偕成社)や「いろいろばあ」シリーズ(えほんの杜)など、あかちゃんとパパママが喜ぶ絵本をたくさん作り続けている、絵本作家の新井洋行さん。「すこやか あかちゃん えほん」シリーズ(岩崎書店)では、新たな目線の絵本に取り組まれています。『しろとくろ』という、モノトーンの絵本を出版。カラフルな色合いや原色を使った作品が定番と言われるあかちゃん絵本の世界で、その対局にある色を使った、実験的な絵本です。
しろとくろがぐにゃーとのびたり、ちぢんだり。いっしょにあそんでいるみたい!赤ちゃんの目線で作られたおどろきの絵本です。生まれてはじめての読みきかせにもぴったり!
新井さんは、『しろとくろ』を書くきっかけについて、こう教えてくれました。
一言で「あかちゃん」と言っても、同じ0歳児でも月齢によって成長の度合いは全然違います。今まで「あかちゃん絵本」を作り続けてきて、新しいチャレンジとして、最も新生児に近いあかちゃんが楽しんでもらえる絵本を作りたいと思ったんです。生まれたばかりのあかちゃんは、色の認識がまだできないと言われています。そのあかちゃんが見ても、コントラストがはっきりとわかる絵本を作りたかったんです。
過去の事例も、成功例もない中の挑戦。その中で新井さんがずっと思い続けていたものが「マキシマムコントラスト」と「新生児への究極のエンターテインメント」だと言います。
そのためには、絵による効果だけでなく、絵本を読んでくれる大人の方が楽しくなるような文章作りも重要でした。「ぎゅーっ」て書いてあると、読む人も思わず「ぎゅーっ」ってためたくなる。「ぼんっ」って書いてあると、大きな声で読みたくなる。ぼくがイメージしたように声に強弱をつけてもらえたら、きっと絵本を一緒に読んでいるあかちゃんも楽しんでくれると思います。
でも、はじめてのことって、ぼくはもちろん、出版社さんも冒険ですよね。アイディアはあっても、「過去に事例がないから」と断られることも多いんです。だから、出版できない可能性も往々にしてありました。
そんなとき、岩崎書店の社長さんがぼくに言ってくれたんです。「この絵本が面白いか、つまらないか。良いものかどうかは分からない。でも、君を信用しよう、好きに作ってくれ」って。「分からない」というのは、すごく正直な言葉だと思いました。 でも、その一言があったおかげで、『しろとくろ』は出版できたんです。
新井さんの直感は見事、成功。『しろとくろ』は今までにないあかちゃん絵本として、新たな定番絵本の仲間入りをしました。その翌年、新井さんは白と黒の世界から一転して、14色もの色が登場する『カラフル』を出版します。
『しろとくろ』が人気になり、続編を作るお話をいただいたとき、最初に提案されたのが、「白と黒」のように、「赤と●●」「青と●●」といった、対になる色を使った絵本でした。でも、ぼくの中で「白と黒」以上に関係性のはっきりとした色の組み合わせを見いだせることができなかったんです。
それなら、いっそいろいろな色が出てくる絵本にしませんか? と提案しました。 カラフルな三角が、にょきにょきにょき。ちいさなまるが、ころりんころりん。
カラフルな色たちが、三角や丸、四角などいろいろな形になり、ニコニコ笑いながら、集まったり、離れたり、楽しく遊んでいるような作品『カラフル』も、子どもたちに大人気。
そして、2017年9月に出版された新作は、色でも形でもなく、『せん』。『しろとくろ』と同じくらい、チャレンジングな絵本です。 いっぽんの線が、ぴょーんとはずんで、ががががが、ちゅるん。
おはなしはとってもシンプル。「せん」が「ぴょん」「ぴょーん」、「が」「ががががが」という音とともに、ページの上を動く様子が描かれています。
今回はカラフルな色たちも登場します。
線だけで絵本というアイディアは、ぼくが絵本作家になりたいと思ったときから、ずっと温めてきたものなんです。
当時、いろいろ絵本を見ていく中で、エド・エンバリーの作品と出会いました。彼の「絵かきえほん」が大好きで、同じような絵本を作れないかと思っていました。そこで思い浮かんだのが「線の絵本」だったんです。そのときはまだ、どういう絵本にしたらいいのか、はっきりと分からず、形にすることはできませんでした。 でも、今回、あかちゃん絵本として、「線」を描くことで、絵本にすることができると思ったんです。
新井さんは、「線」について、「絵になることもできるし、文字になることもできる。コミュニケーションをとるためにいくらでも広がっていく高いポテンシャルを持ったもの」だと言います。たしかに、線の動きを想像して、ページをめくる楽しみ。音と線が合わさって、動きが生まれる心地よさを絵本で体験することができます。
しかし、この絵と言葉のコラボレーションをまとめるのに、今回、とても悩まれたそうです。
『せん』は特に、編集者の方から「オリジナリティのある音を探しましょう」と言われたので、印象に残る音、この線の動きにピタッとはまる音を作るため、何度もやり取りをしました。
さらに、線を描くことも、想像していた以上に大変だったそうです。
この線は、ぼくがサインペンを使って描いたものを、スキャナーで取り込んで、デジタルで太さや色などを調節して作っています。手描きのような微妙な揺らぎがあるのは、そのためです。でも、ちょっとでも考えて、手を止めてしまうと、すぐにインクがにじんでしまって、やり直し。何度も何度も、線を描きましたね。
そんな新井さんは、この『せん』を通して、読者に感じてほしいことがあると言います。
はじめて企画を編集者さんに見せたとき、「風景の見方が変わりました」と言われたんです。「線」が、普段はほとんど注目されていないこと、この絵本で「線」が注目されるんだということを知って衝撃でした。
だから、『せん』を手にしてくれた子どもたちにも、「線」を意識してもらえたらと思います。「線」は、普段はほとんど気にされないけれど、言葉を紡ぐこともできるし、絵を描くこともできる。 ぼくたちが、手を使って何かを相手に伝えようとするとき、そこにはきっと「線」があると思います。「線」を注意してみることで、いろいろな想像力を膨らませてみてください。
絵本『せん』を通して、「線」の魅力を発見してみましょう。
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