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連載

岩崎書店 えほんができるまで 作家インタビュー

岩崎書店様

2017/09/14

【連載】『たからものの あなた』まつおりかこさんインタビュー

【連載】『たからものの あなた』まつおりかこさんインタビュー

●私も、昔は「かぎっ子」でした。
子育て世代の半数以上が働きに出ていると言われている、今。
ママがお仕事の間、保育園や幼稚園の延長保育で過ごしている子も少なくありません。
そんな小さなお子さんの頑張りと、子どもを思うママの気持ちを、水彩画の優しいタッチで描いた作品が生まれました。

たからもののあなた たからもののあなた」 作:まつお りかこ 出版社:岩崎書店

フウのお母さんは家事やお仕事で毎日大忙し。
園で描いた絵をお母さんにすぐ見せたかったのに、その日お母さんはフウが寝た後帰ってきたのでした。

「どうしておかあさんは、ずっといっしょにいてくれないの!」
とうとう泣きだしたフウをお母さんはぎゅっと抱きしめて言いました。
「いっしょにいないときもわすれないで。フウはおかあさんのだいじなたからもの。だいすきで だいすきで だいすきよ…」

お父さんもお母さんも働いている家庭が、今では珍しくありません。
フウも、いつもは園の先生やお友達、おばあちゃんと楽しくすごしています。でも、ちょっとずつ溜まった「さみしい」が、ふとしたきっかけで出てしまって…。

「大好き」という言葉と共にお母さんに「ぎゅっ」とされる安心感。
この絵本を親子で一緒に読みながら「大好き」と「ぎゅっ」をしてみてください。

作者のまつおりかこさん自身も、小学生のころ、両親が働きに出ていて、「かぎっ子」だった経験を持っていらっしゃるそうで、お母さんが家にいる友だちを見て、「学校から帰ってきたときにお母さんが家にいる子は良いなぁ」と思っていたと言います。
今回のおはなしが生まれたきっかけは、知り合いのキャリアウーマンのお母さんと、その娘さんのやりとりだったのだそうです。
作者のまつおりかこさん
その子も、ママが働きに出ているのが寂しくて、ある日「私は、ママみたいになりたくない!」って言ってしまったそうなんです。彼女の気持ちは、子どものころの私を見ているようでした。
……と同時に、大人の私は、「でも、お母さんだって頑張っているんだよ」ということも知っている。彼女と同じような気持ちを抱えている子どもたちに、お母さんの頑張っている姿を伝えたくて、おはなしを描こうと思いました。
完成までに何度も、編集者とラフのやり取りを繰り返したというまつおさん。物語を描き直すうちに、次第とママが頑張っている姿を描く絵本から、ママが働いているときの子どもの心情を描く内容へと変わっていったそうです。
ラフを見せていただきました。
絵本の読者を考えたとき、小さい子には、まだお母さんの普段の頑張りを想像することは難しいと思いました。それよりも、「ママも本当は、あなたのそばにいたいんだよ」ということを感じられるおはなしの方が、お子さんも共感してくれると思ったんです。
『たからもののあなた』の主人公・フウは、お母さんが大好きなウサギの子。お母さんもフウが大好きなのですが、お仕事もしているので、ずっと一緒にいられるわけではありません。

あるとき、園で大好きなお母さんの絵を描いた、フウ。お母さんに見せようと思うけれど、お母さんは仕事で帰ってくるのが遅くなると言われます。

翌朝、夜遅く帰ってきたお母さんのために、朝ごはんを準備しようとするフウ。しかし、牛乳をこぼしてしまい、せっかく描いたお母さんの絵が、ぬれてしまいます。

「どうして おかあさんは フウと いっしょに いてくれないの。
フウの ことが すきじゃ ないの。
フウは おかあさんと ずっと いっしょに いたいのに!」


ずっと我慢をしてきたフウは、とうとう泣き出してしまうのです。
フウちゃんが泣く場面では、どういう言葉にするか、何度も考えました。絵がぬれちゃったことを悲しむ言葉にしようかとも思ったのですが、ここはフウちゃんがずっと抱えてきた感情を爆発させることにしました。
出来上がった作品を見たとき、この言葉にして良かったと思いました。
絵本の中でフウちゃんが感情を爆発させることで、フウちゃんみたいに我慢強い子が共感して、一緒にすっきりとした気分になってくれたら嬉しいですね。
絵本の中でまつおさんが特に伝えたかった、親子の愛情表現。それが、「言葉」と「ハグ」だと言います。
子どもの頃の家のご近所さんで、私のことを本当の孫のようにかわいがってくれるおばあちゃんがいるのですが、彼女は私を見るといつも「あなたは私の宝物よ」と言ってくれます。
気恥ずかしい気持ちもありますが、愛情を言葉にして伝えてくれる彼女の存在は、私の心の強さになっていると感じます。
もし、それが親子であれば、もっともっと強く、子どもの心に刻まれると思ったんです。
愛情を言葉にして伝えることと、「ハグ」がもたらす、効果について、事前にこの作品を読んだ、臨床心理士の帆足暁子さんは下記のようにまとめています。
【こどもの“生きるチカラ”につながる 抱っこのパワー】
●愛情ホルモンのオキシトシンが分泌され、ストレスを和らげ安心感をもたらす
●オキシトシンは抱きしめる側にも分泌される!
●感情の爆発をストップする感覚が養われ、感情をコントロールできる子になる
●「自分は求められている」という自信を持て、苦境に立ったときも生きていける子になる
ハグは慣れていないと、どんなときにすればいいか分かりませんよね。例えば、出かけるときや、帰ってきたときなど約束事を決めて、日常的にハグをする環境を作ることで、自然と愛情を伝えることができるようになると思います。

●雨の日の体験を描いた『あめのひえんそく』
大学在学中から、イラストレーターとして活躍されている、まつおりかこさんですが、絵本作家になることには、特別な思いがあったそうです。
母親が元幼稚園教諭だったこともあり、絵本はとても身近なものでした。子どもの頃は、毎日のように母が絵本の読み聞かせをしてくれました。
特に林明子さんの作品が好きで、『こんとあき』や『いもうとの にゅういん』(福音館書店)は大きくなっても何度も読み返した絵本です。
まつおさんのデビュー作『あめのひえんそく』(岩崎書店)は、雨の日にお母さんとお家の中にレジャーシートを敷いて、ピクニックのようなことをして遊んだ体験を元に描いた絵本なのだそう。
まつおさんの作品を描くときのこだわりを聞いてみました。

あめのひえんそく あめのひえんそく」 作・絵:まつお りかこ 出版社:岩崎書店

とっても楽しみにしていた遠足。ところが当日は雨…。だれしもガッカリした経験があるのではないでしょうか。こぐまのモンタもかなり落ち込みます。でも大丈夫。お母さんがなんと「あめのひえんそく」に連れて行ってくれたのです!
愛情たっぷりのお母さん。モンタは遠足に行けたことも嬉しかったけど、大好きなお母さんと楽しい時間を過ごせたことも嬉しかったことでしょう。親子のかけがえのない時間を描き出します。

一貫して描きたいと思っているのは、「温かみのある世界」です。大人になると大変なことがたくさんあるかもしれないけれど、絵本を読む子どもたちには、絵本のような温かくて幸せな世界があるということを感じてほしいと思っています。
まつおさんの思いは、絵本を通じて、子どもたちにもきっと届くことでしょう。最後に絵本ナビユーザーへメッセージをいただきました。
お母さんやお父さんは、お子さんにすごく愛情を感じていると思いますが、絵本に出てくるフウちゃんとお母さんのように、ハグや「大好きだよ」と言葉に出すなど、子どもに伝わる形で表現をして、今よりもさらに愛情を深めてほしいと思います。


●『たからもののあなた』絵本原画展
日程:2017年10月17日(火)〜10月22日(日)
時間:12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
場所:喫茶・ギャラリー りんごや
東京都文京区根津2-22-7
http://ringoya-galerie.com
作家在廊予定:10月17日(火)、21日(土)、22日(日)


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